70.シンという男 12
「今すぐ助け出したとしても、なぜ攫われたのかわからないままだと、不安を抱え続けるままだろ?
妹さんと勘違いしたのか、嬢ちゃん自身目当てで、代替えが難しい希少なものとして連行したのか、唯一無二の存在としているのか。
嬢ちゃん本人目当てで、他に変わりがきかないとなると――嬢ちゃんの必要性如何によるが、国と国との戦争になってもおかしくない。
サヴィスが抵抗するならそうなるだろうが、サヴィスが戦争を起こすほどの価値なし、戦争を回避できるなら、水面下で国同士やり取りする――。
……なんてことになったら、お手上げだ。
考えすぎかもしれないが、現状から考えると、嬢ちゃんがこの国にとって重要なんだろうと思わざるおえない。
それがなぜか。
今後の為にも知っておくべきだと思うんだが……」
提案しつつも、最終判断はフィーナ達に仰いでいる。
シンの話を聞いたフィーナは、口を閉ざして俯いた。
膝の上に置いた両手を握りしめる。
シンの言うとおりだと思った。
アルフィードはアブルード国と関わりのあるマサトの主、フィーナと間違われて攫われたのではと、その説が有力だった。
その他、様々な説が浮上しつつも、確かな答えは出ていない。
フィーナはアルフィードを助けられれば、それでいいと思っていた。
その先のことは、考えていなかった。
アルフィードがなぜ拉致されたのか。
その理由如何で、救出後のサヴィスに戻ってからの生活が異なってくるというのに。
うつむいて、考えた。
これまでのこと、これからのこと。
姉――アルフィードと過ごした日々。
時には厳しく、けれど基本的には妹に甘い姉だった――。
アルフィードが拉致された理由がわからないまま、不安と恐れに怯える日々を送る――。
そんな姉は見たくない。
「様子を見ていたが為に――時期を逃した。
……なんてことには、ならないんですか」
考えた末に出したフィーナの答えは「拉致された理由をはっきりさせる」だった。
真意を探った結果、時期を逃し「アルフィードを助けられなかった」とは言わせない。
フィーナの挑む眼差しに、シンは静かな笑みを返した。
「必ず助けると誓うよ」
シンが告げた誓い。
その真意を、フィーナ達は知らなかった。
そして。
(どこ行ったの)
肝心な時に傍に居ない、自身の伴魂にフィーナは歯がみした。
勝手知ったるかつての自国だ。
『心当たり見てくる』
アブルード国が国として関与しているなら、使いそうな場所を知っているからとマサトは時々単独で行動していた。
短いけど、更新します。




