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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
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64.シンという男 6


 肩を上下に揺らし、荒いだ呼吸を整えるアルフィードをシンは呆然と見ながら、ぽつりとこぼした。


「そうしてたけど……?」


 対等に接していたと告げるシンに、アルフィードの感情は瞬速で沸点を振り切った。


「ウソよ!

 私が注意するとヘラヘラ笑って逃げてたのに!」


「そりゃ怖いから」


「…………っ!」


 自覚はあったものの、改めて告げられると身につまるものがある。


 シンも強張ったアルフィードの顔に気付いて、慌てて弁明した。


「そうさせたのは俺だってわかってる。

 けど……俺は過去も今もこの先も、騎士になるつもりはない。

 逃げるに逃げれず、ずるずるここまで来たってだけだ。

 情はあっても組織の一部として組み込まれるのは……な~んか違うんだよなぁ」


 シンは困った顔で息をつき、頭をかいた。


「曖昧な立場にいるよう、敢えてそうした態度をとってきた。

 怒られるとわかりながら、敢えてそう行動してた。

 それで悩ませたんだったら……悪かった。

 ふざけすぎた。

 けど軽く見たつもりも、おざなりにしたつもりもないから。

 ……甘えすぎたな……」


 最後の一言は目を閉じて上を仰ぎ、ため息と共に漏らす。


「甘え……?」


 意味がわからず、アルフィードは疑問を口にする。


 声を聞いたシンが「そうだよ」と告げてアルフィードに目を向けた。


「度を超えたら注意されるってわかってたから甘えてた。

 自分でさじ加減、判断しないといけないのにな」


「…………?」


 アルフィードにはシンの言う意味がわからなかった。


 注意されるのが甘え?


 首を傾げるアルフィードに、シンは苦笑する。


「礼儀作法にも微妙なさじ加減、あるだろ。

『必要な時には注意されるだろう』って――『注意された時に改めればいい』って――その辺の判断を丸投げしてた」


 つまり。


 アルフィードに注意されたら「行き過ぎ」で、注意されなければ「許容範囲内」としていたと、シンは告げる。


「逃げてた自覚はある。

 注意された都度、改めてたつもりだけど……甘かったか?」


「――それ……は……」


 問われて、アルフィードは答えに窮した。


 アルフィードが注意すると、シンはその点に関しては忠実に改めていた。


 忠実であったが、それは「注意した点を改めただけ」だった。


 アルフィードはシンに、波及した対応を望んでいたのだが、現実は異なっていた。


 貴族社会を知らないシンに、貴族社会流の、含みを持たせた対応を望むほうが間違っていたのだ。


 返答に困るアルフィードを見て、シンは息をついてバツが悪そうに頭をかいた。


「悪い。

 子供って言ったのは幼いとかそういうんじゃなくて……何て言うかな。

 こっちは受け止める度量はあるって……伝えたかったんだけどなぁ」


 言葉を模索しながらシンは話す。


「王女様の側仕えとして、いつも気を張ってんのもわかってたし、長子の気質も察しがつく。

 抱え込まなくていいって――頼っていいって言いたかったんだ」


 苦笑交じりに告げるシンに、シンがそのように考えていたと思わなかったアルフィードは驚きを隠せない。


 同時に……シンが他の人と違うと感じていた理由も、本当の意味で理解した。


 王女オリビアの側仕えとして、周囲から相応の扱いを受ける中、シンだけは砕けた態度で接してきた。


 そうしながら要所要所で、苦言を言われた。 


 年下だからと軽んじられていると思っていたが……シンの気遣いだったのだ。





更新、遅くなりました。すみません。

仕事がたてこんだ & シンとアルフィードの関係が私の中で練り上がってなかったので、動いてくれなくて大変でした。

書きながら、自分でも腑に落ちなかった点が、すとんと納得できる部分も出てきて驚きです。

アルフィードのシンへの感情……というか、変化と言うか。

私にも「?」の部分があったのですが、今回(まだ更新してない部分も含めて)で、ようやく理解でき始めました。

シンは、他の人達と一線画した場所にいるので(立場上、出番上、心理上)、ホント扱いつらいです……。

アルフィード救出で出番が多くなります。

以降は……どうなるのかな。

(流れは登場人物にお任せです)

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