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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第二章 セクルト貴院校
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23.スーリング祭【ディルク】

※誤字、訂正しました! 報告日:2019/06/05:訂正日6/5 「お身仕切り置き」→「お見知りおき」

報告してくれた方、ありがとうございます! m(_ _)m


 アルフィードの「お仕置き」が一段落して、フィーナがつねられた両頬を自身の両手で押さえて痛みに耐え忍んでいる中。


 オリビアの後方から入室した、護衛と思しき騎士がそそそ、とフィーナの側に歩み寄った。


 アルフィードから解放されて、フィーナは落ち込みつつ元の席に戻って、使用人たちに装飾品の取り外しに身を任せている。


 若草色の瞳と、毛先にくせっ毛のある同色の髪を有する青年は、姉に叱責されて落ち込んでいるフィーナに「お初にお目にかかります」と声をかけた。


 使用人に衣装のあれこれをまかせていて、動作に制限があるフィーナは、椅子に腰かけたまま顔だけを上げて、声をかけた青年を見上げた。


「誰?」


 眉をひそめるフィーナに、青年は優雅に簡易な挨拶を送る。


「ディルク・ベルーニアと申します。以後、お見知りおきを」


 人当たりのよさそうな、柔和な笑みを浮かべるディルクにベルーニアの名から「ああ」とフィーナも思い至った。


「ザイルの弟さん?」


「御名答」


 苦笑交じりに告げて「兄はご迷惑をかけていないでしょうか」とフィーナにも敬語を使用する。


 身分的にも明らかに下で、年齢もフィーナの方が幼いはずだ。


 なのに、下の者に敬語を使用してくるディルクに、フィーナは不信感を露わにした表情を浮かべた。


 状況にそぐわない態度をとってくる輩というのは、何かしらの下心があるのだとザイルに幾度となく言われ続けていた。その助言が、フィーナには教訓として刷り込まれていた。


「迷惑だなんて、とんでもない。ザイル様には日頃よりお世話になっております」


 礼儀をわきまえたフィーナの返答に、ディルクは少々目を見張った後、苦笑を浮かべた。


「無理を言ってエルド家に御厄介になっていると聞いておりましたが」


「――それは……」


 始めは両親が扱う薬草や薬の調合に関して、日々興奮するザイルが「薬草に関して学びたい」からと店で雇ってほしいと言いだした時は、素直にそのまま受け止めていた。


 けれど。


 オリビアが「珍しい伴魂を狙われた」と知っていて、ザイルはオリビア管轄の騎士団に在籍していた元騎士で。そうして今も交流があるようで。


 そうした流れを考えると、純粋に薬草について学びたいからエルド家に雇用されているとは素直に考えられなかった。


 ディルクとフィーナのやり取りを、傍から見ていたオリビアが、ため息交じりにフィーナに告げた。


「フィーナ。身構えなくていいから。ディルクはフィーナの伴魂を見たい触りたいだけなんだから。ザイルもそうだけど、ベルーニア家は珍しい伴魂に目がないのよ」


「ああああオリビア様。そんな申しようでは不審に思われてしまいます。警戒されないように注意を払っていたと言うのに」


「回りくどい方が不信感強いわよ。フィーナには思ってること直接言った方が伝わりやすいから」


 オリビアに言われて、ディルクはおそるおそるフィーナに「伴魂を拝見したいのですが」と告げた。


 ザイルが白い伴魂に並々ならぬ好奇心を抱いているのを、フィーナも知っている。それが血筋や家系によるものだと知ると、フィーナの警戒心も解かれていた。


「いいですよ」


 と、返事をしたものの。


(――『嫌だ!』)


 すぐに意識下に伴魂の声が届いた。


 普段、意識下のやり取りに慣れていないので、想定外の声が聞こえると「ぅひゃっ!」と体が震えてしまう。


 フィーナの身ぶるいに驚くディルクをそのままに、フィーナは自身の伴魂に目を向けた。


 白いネコは眉をひそめて、耳を伏せている。声も聞こえるが、渋面仕切りの表情でも感情は伝わってくる。


(――『やだよ。絶対ヤダ』)


(――どうして?)


(――『生理的に受け付けない。キモイ』)


(――セイリテキ? キモイ?)


(――『とにかく嫌だってこと。見るだけで嫌なものってあるだろ。そういう感じ』)


(――う~ん……。見られるだけでもダメ? スーリング祭で助けてもらったから、何かお礼したいんだけど)


 そう言われると、伴魂も反論できない。


 渋々ながら『見るだけ。触るの厳禁』との条件を付けて、ディルクの申し出を受けたのだったが。


「あああ……これが話に聞いていた伴魂……。艶やかな毛並みが何と神々しい……」


 ――と、称賛讃美を興奮気味でつぶやき呼吸も荒い。


 鈍いと言われるフィーナも伴魂を眺めるディルクの様相に、ただならぬものを感じて、ドン引きしていた。


(『だから嫌なんだよっ! こいつのはっ!』)


 内心、悲鳴を上げつつ『気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!』と連呼する伴魂の心情をフィーナも理解した。


 確かにこれは……対象となる当人にとっては嫌悪感を抱いても仕方ない。


 勢い余って、ディルクが伴魂に触れようとした時には、さすがのフィーナも自身の伴魂を抱き上げて「ダメです!」と庇ったのだった。



 

書く機会がのびのびになっていた、ディルクに関してです。

ベルーニア家、総じて珍しい伴魂には目がないのは共通事項です。

ディルクが危ない人っぽくなってますが、害はありません。(笑)


スーリング祭。

本当は話が大きく展開する事項を書く予定でしたが、時期尚早だと思ったので、それに関してはおいおいと。

設定的な話がもう少し続きます。

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