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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
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60.シンという男 2


「どうして、私があの場所に居るとわかったんですか」


 アブルードへの往来があったにしても、あの屋敷は都内でも僻地に近い。


 商店街から離れていたのに、なぜすぐに当たりをつけられたのか。


「ん?」


 シンはお茶を口にしながら考え込んだ後、カップを置いて答えた。


「企業秘密。」


「え……」


「俺も独自のツテを持ってる。

 ……が。

 簡単に人には明かせなくてな」


「………………」


 口をつぐんでいるものの、納得できない表情のアルフィードに、シンは仕方なさそうに肩をすくめた。


じゃの道はへび

 正攻法だけが手段じゃない。

 知らずにいた方がいいことも、この世にはある。

 そういうのは関わらない、知らずにすんだ方がいい」


 違法なものに関る可能性を、シンは示唆する。


 それが今回関わっているのか否か。


 わからないが、明言しないところを見ると前者なのだろう。


(もしくは、手の内を見せたくないのか――)


 隠しておきたい部分もあるのだろうと、訊ねて答えるまでの間、思案を巡らすシンの表情から、アルフィードはそう感じた。


 それから現在地がアブルード国のどのあたりになるのか、主要街道までどの程度離れているのか、サヴィス王国はどの方角になるのか。


 話しながら、アルフィードはカップを見下ろして、持つ手に力を込めた。


「ありがとう……ございます……」


「…………は?」


 唐突に告げられた言葉に、シンは虚をつかれ、目をしばたたせた。


 アルフィードは手にしたカップに視線を落したまま、勢いにまかせて言葉を続けた。


 そうしなければ、礼を言えなくなると思った。


 感謝しているのに。


 これまで彼にきつい態度をとってきた後ろめたさが、勢いづいた言葉を止めると、そのまま礼も言えなくなりそうだった。


 ポカンとするシンに気付いたが、アルフィードは勢いにまかせて、アブルードでシンと会ってから、ずっと気になっていたことを訊ねた。


「なぜ……助けてくれたのですか?」


「……なぜ?」


「あなたにキツク接していた私を……オリビアの……たとえ王女の命だとしても、なぜ引き受けたのですか。

 あなたなら断ることもできたでしょう?

 望んで騎士団員となってる他の方々と、立場が異なるのですから」


 シンはリーサスの強引な誘いに負けて騎士となった。


 オリビアもリーサスに根負けして、身元不確かなシンを騎士団員としている。


 最初はシンをいぶかしんでいたオリビアも、庶民の目線と騎士団員としても通用する素行と視点、振る舞い、時折ハッとする目の置き所から、それとなく重用するようになっていた。


 ディルクのように護衛騎士とするのではなく、騎士団の中で役職を与えるわけでもなく。


 一般騎士兵としながら、オリビアはシンに度々意見を仰いでいた。


 シンも気兼ねなく、「王女オリビア」でなく、一騎士団の長に意見を述べていた。





宣言。この話からアルフィードとシンとのやりとり、書き直し可能性大です……。

言っちゃいけないけど、私にも扱いきれないんです、この二人……。

この話を書きながら、自分でもメチャクチャ驚いてます。

「シンとアルフィード、煮詰めてなかった!!」

……と。(苦笑)

ずっとこの二人は私の中であったんですが、なんかこう……すんなり進まない……。

イメージビュー(想像画)が先行して、内面詰めてなかったな……。

そう思い至ってます。

そして思わぬ話の進み具合です。(「ガハっ」と吐血心境)

とりあえず、なりゆき任せですが……。

着地……できるのかな……(不安不安不安不安)

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