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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
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53.ルーフェンスの巫女 8


 男性の気品あるたたずまいからただ人でないと感じた。


 先に入室した青年は、老齢の男性に頭を下げたまま敬意を示している。


 誰、と訝るアルフィードとプリエラを、老齢の男性はしばらく眺めておもむろに口を開いた。


「食事をとらないと聞いたが」


(――――!)


 聞き覚えのある声に、アルフィードもプリエラも目を見張り、体を強張らせる。


 目隠しされて連れられた場所で対面した――『神聖なる儀式』の場にいた、暗がりで顔の見えなかった男性――。


 彼から厳格な威圧を感じ、アルフィードは小さく息をのんで、意を決して答えた。


「何が入っているのか、わからないものを口にできません」


「薬のことか? よかれと思ってのことだが」


「抵抗できないよう、自由を奪ったの間違いでは?」


 反抗的な物言いに、男性はぴくりと眉を動かした。


 ジロリと眼光を鋭くする男性を、アルフィードは負けじと見つめ返す。


 無言の攻防後、先に口を開いたのは老齢の男性だった。


「日暮れ後、儀式を行う。

 望み通り、夕食には薬を入れずにおこう。

 身を持って知れば、薬が情けだと知れよう」


 ため息混じりに告げると、男性は踵を返して部屋を後にする。


 彼らが退出したのを確認して、アルフィードとプリエラは、緊張から解放され、二人同時に盛大に息をついた。


 得体の知れぬ威圧感を持った人だった。


 彼がセレイスが知りたがっていた人物なのだろう。


 肩書も役職もわからないが、ルーフェンスの巫女の権限を有していると推測できた。


 セレイスの依頼は、オーロッドからプリエラに命じられている。


 アルフィードとプリエラは男性に関して意見のすり合わせを行い、報告する内容を精査した。


 予期しなかった男性からの接触に、アルフィードは戸惑い、同時にサヴィス王国に戻れる期待に胸を高鳴らせた。


 セレイスの依頼は、ルーフェンスの巫女の権限者を探ること。


 今、外見を知った。


 あとは機構の把握だ。


 老齢の男性が、ルーフェンスの巫女に対して――神殿にどのような権限を有し、どのような立場なのか。


 探る算段を考えつつ、夕食を終え、迎えに来た神殿の使者に従い、目隠しされて儀式の場へ連れられた。


 その後、投薬なく『神聖なる儀式』に立ち会ったアルフィードは。


 薬を拒否した判断が正しかったかどうか、思い悩むこととなる。




      ◇◇        ◇◇




 夕食をとった数刻後。


 アルフィードの元に、神殿の使者が来訪した。


 目隠しされ、目的地までの道順を隠匿される。


 目的地に着いてからも、手を引かれて儀式場に到着するまで、目隠しのままだった。


 会場に到着後、目隠しをはずされ、以前座った椅子に腰を下ろした。


 薬を服用していた時は、朦朧とした意識の中、不鮮明だった景色が、今はしっかりと目に見える。


 ――とは言っても、薄暗い室内の為、はっきり見えるものはそうなかった。


 鮮明な意識で室内を見まわしたものの、朦朧とした意識の中、見た景色と大差ない。


 殺風景な石室、儀式の祭壇、祭壇を囲う神殿の者と祭壇にまつられる魔獣――。


 老齢の男性は、以前と同じく祭壇の奥に座していた。


 光の具合から肩から下の姿しか見えない。


 祭壇には魔獣が鎖に繋がれて祀られている。


 これまで同様、この場から逃れようと、神殿の使者を威嚇しつつ激しく暴れていた。


 ――と……。


「――え?」


 椅子の肘置きに置いた腕を、肘置きに紐でくくられる。






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