51.ルーフェンスの巫女 6
◇◇ ◇◇
2度目の儀式は正午前だった。
アルフィードが不可解な時間に睡魔に襲われ、もしやと思った時には遅かった。
抗いがたい睡魔に呑まれ、それでもどうにか儀式中に目覚めた。
後にプリエラから、白装束の者たちの話を伝え聞く。
儀式中、眠り続ける量を摂取したはずなのにと不思議がっていたと。
その話から、食事に薬を盛られた確信を深めたアルフィードは、翌日の朝食から食事を拒否した。
「何が入っているか、わからないものを口にできません。
儀式の参加を望むのなら、そうおっしゃってください。
夢見心地の――あいまいな……何もわからない状況など受け入れられません」
食事を用意するのは屋敷の使用人だ。
彼、彼女らはアルフィードの行動に戸惑いながらも強要できない。
せめて水だけでもと、毒味として目の前で口にした水差しとコップを渡しても「飲み口が違えば同じとは言えない。淵に薬を塗られているかもしれない」「国土の違いでこの国の国民は無害でも、私たちには影響あるのでは」……等々。
思いつく限りの屁理屈、いちゃもんをつけて、飲食を頑なに拒んだ。
――食は数食我慢できるが、飲料の我慢は難しい。
祖父の薬草探索に興味本位で同行し、痛い目にあったアルフィードは身を持って知っている。
用意される飲食を拒否する前に、プリエラに確認していた。
プリエラが持ちこんだ物の中に、水と塩、砂糖があることを。
そうして――。
「――水宴」
声を潜めて呪文を唱える。
サヴィス王国では初心者用とされる魔法だ。
呪文に応えて、用意したグラスに、とぷんと水が満ちた。
アルフィードはふう、と息をつき、見ていたプリエラは感嘆する。
試飲の結果は良好。
こうして飲み水は賄えた。
しかし「水宴」を知らないアブルードの者たちは、水分を摂取しないアルフィードの体調を危惧した。
水宴に驚く、プリエラを含むアブルードの人々を、アルフィードは不思議に思う。
「この国ではどのような魔法があるのですか?」
サヴィス王国で魔法は、日常生活で使用していた。
騎士や魔術師が使用する攻撃的な物は国全体から見ると、ほんの一部の、限られたものだ。
一般的な魔法に驚くプリエラに、逆にアルフィードは不思議に思う。
ではこの国ではどのような魔法があるのかと。
「戦場で使用するものがほとんどです」
攻撃的、防御的な魔法ばかりだとプリエラは言う。
プリエラも使えるらしいが、今は従魔が側にいないので無理なのだそうだ。
プリエラの言葉を聞いて、アルフィードはハッとした。
(伴魂がいないのに、魔法が使えた――?)
驚き、戸惑った。
なぜか全くわからない。
戸惑うアルフィードにプリエラは気付かないまま、サヴィス王国の日常的な魔法について訊ねていた。
アルフィードは戸惑いながら、日常生活になじんだ魔法をいくつか話す。




