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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
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50.ルーフェンスの巫女 5


 そうした自身の状況を把握したうえで、アルフィードはプリエラの謝罪理由を聞いた。 プリエラ曰く。


「日も昇らない早朝、白装束の者達に部屋に押し入られ、アブルード国主の意向で貴殿をとある場所にお連れしたいと言われました。

 あまりにも不躾な上、事前に伺いがあるべきだと告げましたが……『神聖なる儀式』は、いつ神託が下りるか不明だからと一蹴されました。

 要する時間は数時間とのことだったので、不承不承ながら抵抗は致しませんでした。

 ――本来、あなた様のご意向をお伺いしたかったのですが。

 意識が不鮮明だったため、彼らに従いました」


 事前に連絡も無く、唐突に部屋に入ってきた白装束の者に、プリエラはすぐさま覚醒し、剣を構えたが――彼らは足音を忍ばせようなどの気遣いも無く、無遠慮に入室した。


 異変に気づき、飛び起きたプリエラと違い、アルフィードは眠ったままだった。


 白装束の者の一人に横抱きに運ばれても、目覚めない。


 その時からプリエラは懸念していた。


 話を聞いたアルフィードも、寝台で上半身を起こして俯き、膝に置いた手を強く握り締め眉を寄せた。


 寝起きはいいと自負している。


 起きるよう声をかけられれば、すぐに目を覚ましていた。


 そんなアルフィードが、プリエラが目覚める物音にも感知せず、抱きあげられても目覚めないなど――。


(睡眠薬――)


 夕食に、薬を盛られたのだろう。


 プリエラの様子から、アルフィードの食事だけに成されたと推測された。


 昨日の、朦朧とする不鮮明な記憶を思い起こしながら、アルフィードは歯がみした。


 眉根を強く寄せ、唇をきつく噛みしめ、拳を握りしめる。


 薬屋を営む両親の元、薬には常人より詳しい自信があった。


 そのアルフィードが、自分に施された睡眠薬に気付けなかった――。


 不快さと悔しさが胸にこみ上げる。


 プリエラはその後の状況を話した。


 アルフィードを連行する白装束の者達に、プリエラは難癖つけて同行した。


 プリエラの同行を白装束の者たちは最後まで渋り続けたが「邪魔をしない」との約束の元、仕方なく動向を許した。


 連れられた部屋の、椅子に座らされたアルフィードの視界の外――後方に、プリエラは控えていた。


 部屋にいた彼女も、アルフィードと同じ儀式を見ていた。


 朦朧としていたアルフィードは、儀式をあまり覚えていない。


 プリエラに「どういうものだったのか」と尋ねると、プリエラは思案顔で眉を寄せ、しばらく黙りこんだ後、口を開いた。


 同国のプリエラも知らないものだという。


「おそらく、神殿のものかと――」


 プリエラは名家の貴族だ。


 重要な儀式は何かしら耳にしているはずだった。


 プリエラも知らない、かつ、白装束の者達の衣服から、神殿が関わっているのだろうと推測した。


 アブルードは皇帝を統治者とし、貴族が内政を取り仕切っている。


 それとは別に、人々の信仰を受ける神殿も、貴族皇族と異なる力を持っていた。


 執行できる権力はないが、彼らが声を上げた時、意向を無下にできない。


 基本、神殿は政に関与しないのだが、見えないところで何かしら行っているのは、プリエラも小耳にはさんでいた。


 政は阻害されなかったので、あまり気にしていなかったが――。


 昨日の儀式を目の当たりにしたプリエラは、形容しがたい不安にかられた。


「神聖だと言っていましたが、そのようには見えませんでした」


 今も魔獣の悲鳴が耳に残っている。


「それで――」


 プリエラの話を聞いていたアルフィードは、気がかりだったことを訊いた。


 アルフィードの意図する質問に気付いたプリエラが、視線を落として静かに首を横に振る。


「絶命したようでした」


「――そう、ですか……」


「あれのどこが神聖というのか――」


 プリエラの言葉は、アルフィードも思ったものだった。


 同時に、何をしようとしたのかが、どうしてもわからない。


 プリエラも一度は遠回しに、次に直接訊ねたが、返事はなかったという。


 疑念と不可解さを持ちつつ、持てる情報であれこれ推測していた翌日。


 再び『神聖なる儀式』が行われたのだった。






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