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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
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14.セレイス 3


 わからないから、細心の注意をはらった。


 下手に抵抗せず、相手の感情を阻害せず――。


「――迷子に、なってしまって……」


 もっともらしい言いわけを話すと、男性陣は納得した様相を見せた。


「そうか~。大変なんだね~。

 じゃあさぁ。

 家族の人が見つかるまで、俺達と遊ばない?」


 同情する素振りを見せつつ、上記言葉を発すると、けたけたと愉快そうに笑う。


 アルフィードは状況を理解できず、返事ができなかった。


 言っている意味が、わからない。 


 迷子になったと言うアルフィードに、家族が見つかるまで「遊ぼう」?


 そこは「一緒に家族を探してあげる」ではないのか?


 戸惑うアルフィードに、声をかけた男性が――すっと目を細めた。


「――お互い、気持ちいいことしようって言ってるんだよ」


 陽気な雰囲気が一変。


 低い声で告げると、アルフィードの口を片手で塞ぎ、抵抗しようとする両腕を、片手で掴み、動きを封じた。


「んんん~~~!!」


 声を上げようとし、精いっぱいの抵抗を試みるアルフィードを、動きを封じた男性は嘲笑する。


「ははははっ。

 こんな所でいいものみつけるなんてな。

 ――たっぷり楽しもうよ。お互いにさ」


 掴まれた両手、圧迫感を持った男性の様相。


 アルフィードはぞっとする寒気を感じながら、必死に抵抗を試みた。


 できうる限り抵抗し続けた。


 そうして抵抗し続けていたが、女性と男性との体力差は顕著に表れた。


 結局、まともな抵抗ができないまま、相手のいいように手を引かれる。


 言いようのない不快感、説明できない嫌悪感を感じつつ――恐怖心に涙がこぼれそうになったときだった。


「――うわっ!?」


 アルフィードに絡んでいた男性が声を上げて、ルフィードから手を離し、敵意と斬りつけた相手に、顔を向けたときだった。


「――せやから阿呆は嫌いなんや」


 金髪、短髪、キツネ目のごとき細目。


 プリエラと同じくオーロッドに仕える男性部下だ。


 後に名をセレイスと知る細身の男性が、男達に剣を向けていた。





 斬られた腕を押さえて、酔った男はセレイスに敵意を向ける。


 セレイスは男達が眼中にない様子で、アルフィードに目を向ける。


 オーロッドに拉致されてから、セレイスと接する機会がなかった。


 側にいたのはプリエラだったし、オーロッドが時々、それに加わる程度だ。


 セレイスは見張り役だろうと、アルフィードは思っていた。


 見張りとしても、剣術の心得はあるのだろう。


 剣を構える姿は、アルフィードもハッとするものだった。


 アルフィードはオリビアの騎士団面々の練習風景を見慣れている。


 剣を構える姿勢だけでも、腕のいい騎士は風格があった。


 そうした騎士と同じものをセレイスから感じた。


「なんだテメェ!」


 酔って頭に血が上った男達が、セレイスに殴りかかる。


 数人が一度に向かってきても、セレイスは平然としていた。


「――ほんま。阿呆ばっかや」


 細い目が少しだけ見開かれたと思った時には、セレイスは動いていた。


 人が入り乱れる中、アルフィードには何が起きたのか、細部は見えなかった。


 はっきりしているのは、しなやかで、流れるように動いたセレイスが、男達を打ちのめしたことだ。


 剣を持ちながら、斬りつけるのでなく、殴打と蹴打、剣の柄等を使用してダメージを与え、戦闘不能としていく。


 一人に数人がかりで敵わない、圧倒的な力の差に、酔った男達は赤かった顔を青くして慄いた。


 セレイスは男達に興味もなかったのだろう。


 ため息交じりに剣を鞘におさめた。


「目ざわりや。はようね」


 告げるセレイスに、男達はビクリと身震いすると、悲鳴を上げながらその場から逃げだした。


 そうした男達を眺め見た後、セレイスはついとアルフィードに顔を向ける。





セレイスの話し方も、つっこみ勘弁願います……。

まがいです。

違うとわかっていながら、敢えて間違った言い方(方言にすべきところをそうしていない)してます。

セレイス。

クセのある性格です。

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