表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
453/754

4.アルフィード 2


 オーロッドはオリビアの騎士団絡みで、アルフィードを知っているはずだ。


 フィーナと勘違いしたとは思えない。


 珍しい伴魂が狙いなら、フィーナと同じく珍しいアルフィードが狙われたのだろうか。


 実際、アルフィードの伴魂は部屋に居なかった。


 気配を探っても、近くに感じない。


 数キロ先でも所在がわかるはずなのに。


 アルフィードの伴魂が狙いか。


 もしくは。


(口封じ……)


 その可能性が高いと、アルフィードは思う。


 オリビアを襲撃したオーロッド。


 彼が再びオリビア襲撃を試みようとしたところ、アルフィードに遭遇した。


 余計な告げ口をしないよう隔離したのだろう。


(隔離ですめばいいけれど……)


 その場で危害を受けなかったものの、このまま何もされないとは限らない。


 邪魔しないよう捕えられているのか、オリビアへ脅迫の道具とするのか。


 最終的には処分するのか――。


 どの道、安全とは言えない。


 衣食住は確保されるようだが、どこまで確かかわからない。


 アルフィードはベッドが三つほど入る大きさの部屋を――実際にはベッドは一つだが――隅々まで調べた。


 何かしら手だてはないかと探る。


 こじんまりとした部屋は、古めかしい割には強固な作りだった。


 出入口扉の建てつけも、両手の平分ほどの小窓も、アルフィードの力ではびくともしなかった。


 二日目に、アルフィードは部屋の不具合探しを諦めた。


 扉か窓か。


 出入口から人目を盗んで抜け出したかったのだが、無理だ。


 物理的に無理なら、人の意識の隙を探った。


 食事やトイレ、風呂など、部屋を出る時や部屋に物が運ばれる時、様子を注意深く眺めて隙を探る。


 アルフィードの世話は、ボブカットの金髪女性に任せているのだろう。


 アルフィードは彼女と接するだけだった。


 小屋に来てからはオーロッドを見ていない。


 ……ただ。


 オーロッドと金髪の女性、若い男性、そしてアルフィードが意識を失う寸前、聞いた中年男性の声が時折、アルフィードの部屋にも漏れ聞こえていた。


 声が聞こえるだけで、話す内容はわからない。


 オーロッドではない中年男性が、時折声を荒げているのは聞こえた。


 それを若い男性がなだめている声も聞こえる。


 そうした声を聞きながら、アルフィードは虚ろな心地で小窓から外を眺めていた。


 日が沈んで窓の外には夜闇が広がってる。


 ベッド側のサイドテーブルに置いたランタンが、部屋を赤々と照らしていた。


 ランタン内の炎の揺れに伴って、室内の明るさも揺らめく。


 そうした揺らめきの中、窓外を眺めてオリビアや王城へと想いを馳せた。


 ここでの生活は、衣食住、不便なく過ごせている。


 広い浴場で毎日湯浴みでき、三食の料理も品があって味もいい。


 旅で足を運んだ宿泊場だったら「大満足」の評価になるが、如何せん、今は捕らわれの身だ。


 待遇がいいと、アルフィード自身感じている。


 捕らえた相手の待遇がなぜいいのか――。


 わからないまま一週間ほどたった時だった。


 アルフィードはぼんやりと小窓越しに外を眺めていた。


 庭らしき草が生い茂る様が見えるだけで、特筆するようなものもない。


 それでも、狭い室内を見るより、外を眺める方が気が紛れた。


 オリビア、フィーナ、自身の伴魂。


 気になることはあっても、今の自分は何もできない。


 動きようがない。


 自分の状況を理解しつつ、どうにかしたいけれど手だてのないジレンマを抱きつつ。


 気を紛らわそうと外を眺めている時だった。


 アルフィードが眺める小窓の淵に、ピョンとウサギが乗ってきた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ