2.オーロッドの所在 2
「話では、こちらの別邸から使用人が頻繁に買い出しに来ているそうです。
状況からして、おそらくオーロッドはこの別邸にいるのでしょう」
オーロッドの別邸は、主たる居住から少し離れた山手と、国境に近い遠方の二ヵ所を所有していた。
近場の別邸は、普段は空家で、管理人が手入れする程度だ。
長期で過ごす時に使用人も同行させるので、人の出入りが多いところを見ると、今は別邸だろうと推測された。
ザイルとリーサスは商いに明るい。
別邸近くの町で、異国の行商人を装って、事前に把握している別邸の使用人に商人として声をかける。
日用品や雑貨など、他国からの行商の装いで使用人と接しながら、それとなく内情を探った。
サヴィス王国から持ってきた、かつ、スヴェイン皇国で仕入れた品で商いをしつつ「伯爵さまに目通り願いたい」とほのめかす。
使用人は「駄目だ駄目だ」と笑って断る。
「こういうのに興味のない方だから」
と言って。
ザイルもリーサスも断れるのは織り込み済みだ。
「なぜ」と訊ねる中で、オーロッドの人となり、オーロッド本人だけでなく、彼の周囲の人間が、流れの行商者をどう扱うかを聞きだす中で、関係者を探っていた。
そうした探りを入れる中で、わかったことがある。
オーロッドの側には部下と思しき男女ぞれぞれ一人ずつが側にいること。
そして何より――。
「何か変わったことはないか」
話のネタとして話題を振ったザイルに、アブルード国では珍しい品を手にとる使用人男性の一人が、ふと口を開いた。
「そういや最近、深青色の髪の女の子が邸宅にいるらしいよ。
俺は見たことないけど。
伯爵さまに縁がある貴族様だろうなぁ。
凛とした品のある方らしい。
保養地としていらっしゃったんだろうなぁ」
オーロッドの別宅がある地域は、保養地域として知られている。
四季折々の自然が美しく、移ろいゆく情景が人々の心を魅了していた。
使用人は「観光に来た御人」と思っていたようだ。
聞きだした容姿から、アルフィードだと確信する。
アルフィードを見つけた。
気持ちが高揚するフィーナに、ザイルが釘をさす。
「話では、アルフィード嬢と思しき女児は、常に誰かしらが側に控えているとのことでした」
使用人は「貴族様を無下にしないため」と考えていたようだが、フィーナ達からすれば付き従う者は「監視役」だ。
オーロッド部下の女性が、アルフィード思しき女児の側に常にいるという。
――従うように見せて、実際は行動を制限しているのだろう。
そう考えたフィーナ達は、女児の動向を探った。
いつ、いかなる時。
どう行動するか、確かめるために。
そうして探りを入れる中、わかったことがある。
アルフィードと思しき女児は、定期的に森の深部に行っていること。
そこで何かしら、作業しているようだと。
その話をした使用人は、実際、目の前で何かあったと言うが、それが何かはわかっていなかった。
オーロッド達は、状況を目にしても、理解できない面々を同行させていたのだろう。
オーロッドのもくろみはわからないが。
アルフィードと思われる女児がいる。
それだけでもフィーナの気概を奮い立たせるものだった。
(お姉ちゃん――)
一月以上、姿を見ていない姉に想いを馳せつつ。
フィーナ達は収集した情報を元に、アルフィードへの接近を試みたのだった。
すみません。短いです。
&更新ペースあげるためにの更新でもあります。
一日で1500字ペースの更新は、地味にきついです……。
なぜだろう。
以前はそうは思わなかったのに。
語り部主体が、主人公ベースから外れると、更新ペースが落ち気味です……。
自分でもなぜか、わかりませんが……。




