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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第九章 アブルード国の思惑
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58.閑話 4


 ザイルの指導の元。


 ドルジェで武芸や魔法の鍛練を共にした時は、フィーナは何も言っていなかった。


 技術を認めるそぶりは全くない。


 驚くリーサスに、カイルは口元を緩める。


「悔しいから言わないと言っていたがな」


 ザイルの指導下での鍛練時。


 フィーナが先んじていた護身術が数日で先を越され、今ではリーサスが手加減しているとわかる。


 それがフィーナには悔しくてならなかった。


「魔法では負けてないと、強がっていたがな」


 信じられない思いで話を聞くリーサスにカイルは告げる。


「一度手合わせをしたいんだが」


 リーサスは即「とんでもない」と断ったが、カイルは引き下がらなかった。


「他の者の技量は知っている。

 リーサス、そなたの技量も知っておきたい」


 そう言われるとリーサスも断りきれず、自主練用の木刀でカイルと対峙した。


 結果はリーサスの圧勝だった。


 圧勝だったが、リーサスは驚きを拭えない。


 カイルがセクルトに入学する前の剣の実力を知っている。


 「王族のたしなみ」と思っていた技量が、今のカイルは騎士学校卒業生に匹敵する。


 ドルジェでザイルの指導を受けたからだろう。


 カイルの技量がザイルの及第点を越えなければ、同行を許さないと聞いている。


 カイルが同行しているということは、ザイルが及第点を出したのだろう。


 負けたカイルも素直に結果を受け入れた。


 セクルト入学前のカイルを、リーサスは知っている。


「ずるをした」との言いがかりも覚悟していたが、それもない。


 事実をそのまま受け止めている。


 拍子抜けした心地のリーサスを、カイルはカイルで実力を認めた。


「魔法はもっと鍛練すべきだがな」


 呪文ルキだけで硬盾デュスクを唱えたものの、発動しなかった点を、カイルが指摘する。


 自分でもわかっていたリーサスは、気まずく思いながらも素直に受け止めた。


 同時に――リーサスはカイルの魔法に驚いていた。


 硬盾デュスクの強固さ、呪文ルキを唱えて発動するまでのスムーズな流れ。


 長兄ルディ、第一王位継承者オリビア。


 注目を集める二人と比べて、存在が隠れがちだが、カイルも非凡な才能を持っている。


 なぜか気付かれていないが――。


(変わられたのはセクルトに入られてから――)


 元々セクルト貴院校は、管理する部署は中央政権に属するものの、外部から干渉できない特殊さがあった。


 貴院校での成績が、卒業後就く部署に影響するためだ。


 在学時、外部からの干渉を受けないように、貴院校での生活は外部に漏れにくく、外部からも干渉されにくい環境になっていた。


 カイルの変化は貴院校に入ってからだ。


 故に今現在、カイルは注目されていないのか――。


 カイルの変化の理由も、リーサスは察しが付いていた。


 二人の噂は聞いていたが、眉つばだと思っていたが。


 共に旅をし、生活をする中で考えを改めた。


 噂と現実は違ったが、それはそれで「どうなのだろう」と悩ましい。


「カイル~~~っ!!」


 少し離れた場所から、フィーナがカイルを呼びながら駆けてくる。


 嬉々とするフィーナを見て、リーサスは頭を抑えた。


 カイルは呆れたため息をついている。


 カイルもリーサスも、フィーナが言わんとすることを悟っていた。


疾風遊戯ヴェルヴィンで試したいことあるんだけど!」


 実験に付き合って欲しい。


 告げるフィーナに、カイルは呆れながらも了承した。


 連れだって歩く二人を見送りながら、リーサスは複雑な心境だった。


 カイルとフィーナ。


 並んで歩く二人は、噂のように交際中に見える。


 ――しかし。


 これまでの旅路でリーサスも察した。


 仲がいいのは確かだが、カイルの方が強くフィーナを想っていると。


「護衛だから」


 ――と、旅の当初、リーサスは常にフィーナの側に居ようとした。


 そのリーサスとフィーナの間に、なぜかカイルが割り込んでくる。


 最初は「フィーナと話すから」と思っていたが、頻繁にそうした状況になるので不思議でしかたなかった。


 アレックスとレオロードに、相談混じりで話すと、二人が何とも言えない、微妙な表情を浮かべ、対処法を明言しなかったことで、リーサスも事情を察した。


 噂は本当だった。


 ――カイルがフィーナに思いを寄せているのは。


 フィーナの気持ちはよくわからない。


 フィーナがカイルに接する態度は、友人、同級生の部類だ。


 共に遊ぶ子供同士のじゃれあい方だ。


 ザイルから、カイルとフィーナが交際している噂は、周囲への牽制だとも聞いていた。


 フィーナもその辺りを理解した上で、カイルと接しているのだろう。


 フィーナの真意がどうであろうと――カイルに想いを寄せていても、両思いであろうとも。


 互いの思いが将来の関係に繋がりはしない。


 両思いでも、セクルト貴院校に在籍している間の関係だ。


 フィーナのカイルへの態度が、それを理解したうえでのものなのか、何もわからないままの自然体なのか。


 リーサスにはわからなかったが。


 ……ただ。


 二人の、互いに信頼を寄せる関係が続くよう、思っていた。

 





更新遅くなりました。

すみません。

仕事が変わって、慣れなくて、日々残業してます。

書く時間がない……。


閑話はここまでです。

魔法をもっと書きたかったんですが、雹の仕組みを勘違いしたのがわかったところで諦めました……。


次はアブルード国です。

アルフィード捜索、始まります。

話の展開はまったく考えてません。(苦笑)

どうするかはキャラ任せです。

どう動くのかなぁ。

どう探すのかなぁ。

私もわかりません。

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