4.二年度の始まりとスーリング祭 4
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ローラから聞かれたカイルは、スーリング祭を知らないのに驚いた。
驚いたものの、よくよく考えれば理解できる。
スーリング祭は、セクルト貴院校の各学年、首席次席を招く、国の中枢部の行事だ。
セクルト貴院校は、学び舎として国の最上級にあたる。
学年の首席と次席だけが参加する行事を、卒業生も在校生も知らない者が存在するのは、無理からぬことだった。
カイルがローラに概要を話すと、彼女は笑顔のまま、さ~っと青ざめた。
「――少々、お待ちいただけますか」
カイルに告げるや否や、ローラはフィーナに詰め寄る。
「――聞いてへんで!? 王族や中央政府高官が参列するやなんて!
各学年の成績優秀者が参加する場やなかったんか!?」
「各学年の首席と次席の方が出席する場ですよ?
将来の為に」
「う~~あ~~~!
なんやの、将来の為にって!
青田刈りなら最初からそう教えてくれや!
うちらやってなぁ、ふさわしい場を想定してあんさんらのドレス作ってんのや!」
キシャー!!……と、火を吹かんばかりにフィーナを責めるローラを、ラナがなだめすかした。
「大丈夫ですよ。
そうだとしても、恥ずかしくない物を準備すれば良いだけですもの」
ローラをなだめるラナは、いつになく凛としている。
「フィーナ。あなたには私の伴魂の件、文化祭の件、お世話になりっぱなしだったから。
こうしてようやく、あなたに恩返しができると、嬉しくて仕方ないの。
フィーナの為に……フィーナの良さを引き立てる、最高のドレスとなるよう頑張るから」
「え……えぇぇぇえええ……そこは「恥ずかしくない程度」でいいよぉぉ……」
目立ちたくない。
そう思っているフィーナは控えめにラナに告げたが、ラナは満面の笑みを浮かべて「任せて」と答える。
フィーナは自分の思いが伝わっていないと諦めつつ、衣装の他にスーリング祭で試みようとしたことを、カイルに相談した。
後にこの提案が、国全土に影響を及ぼすこととなる。
そうした準備を経て、スーリング祭が開催された。
短いので、今日はもう一つ更新する予定です。




