15.集活(トゥルマ) 5
「お二人はクラスの出しもので劇に出ていらっしゃったの。
精霊の姿をされたアルフィード様から手当てを受けた生徒は「本当に聖女様のようだった」と語っているわ」
(ええ~~~? それって意識が朦朧としている中、着飾ったお姉ちゃんから手当て受けての思いこみじゃない?)
「オリビア様も、御美しい御姿だったと聞いているわ。
――ああ! 見てみたかった!」
興奮気味に告げるテレジアを見て、フィーナは察した。
(――あ。ダメだ)
――と。
貴院校の女学生と接する中で知ったのは、王女オリビアに心酔し、彼女に使えるアルフィードにあこがれる生徒が多いことだった。
フィーナはそうした生徒から、真逆の対応を受ける。
すり寄られるか、無視されるか。
貴院校入学当初は、対応の仕方がわからず、律義に個々に誠意を持って応対していた。
今では慣れて、笑顔を向けて、言葉なく、完全スルーを続けている。
まさかテレジアがオリビア心酔派だったとは――。
救護――包帯の巻き方を学びたいと言うのも、オリビアへのアピール材料では?
そんな勘ぐりをしていたフィーナは、その後告げたテレジアの話を「真偽不明」と思いこんだ。
「アルフィード様の手当てを受けた生徒が言っていたのよ。
患部が湯船に浸かったような心地よい温かみを持って、傷口が塞がったと」
(手当されて、傷口を覆われたってことだろうな~)
テレジアの話を、フィーナは流して聞いていた。
アルフィード本人が「覚えがない」と言ったから、ありえないだろうと思っていた。
――フィーナは知らなかった。
アルフィードはフィーナと違い、薬屋の手伝いをしていなかったと。
フィーナは幼少期、伴魂を取得できなかった事情から、万が一の為、家業の手伝いをしていた。
ドルジェ村にしてもサヴィス王国の庶民としては、継ぐ家業が決まっていても、幼少期に家のやり方に染めないようにしている。
それは中児校卒業後、研修期間として他の家業で学ぶ際、不利益となるためだ。
アルフィードはフィーナと違い、薬屋の手伝いをしたことはほとんどない。物理的な傷の手当ては、アルフィードにはできなかったはずなのだ。
その事実を、フィーナは知らなかった。
テレジアはそれからしばらく「オリビア愛」を語った。
自分が巻いた種に引きつった笑みでフィーナは対応していた。
姉を通じてオリビアと親交があると知れたら――。
怖くて考えたくもない。
こうして始まった集活は、やがてフィーナの知らないところで広がりを見せていくのであった。
分量が少ないので、本日二度目の更新にします。
これで、私的には必要最低限の世界観&人物&設定の下準備的話を書ききったと思っています。
今後、主軸絡みの展開となる予定です。
章の表題に持ってきますが。
マサト(異世界転生者)いわくの国、アブルード国が動きます。
 




