8.期末試験 3
「――――――。
――――――。
――――――。
――――――え?」
結果に、誰よりも驚いたのが、当人、サリアだった。
「やった~~~! サリア~~~!!」
飛び跳ねんばかりの勢いで、フィーナがサリアに抱きついて喜ぶ。
サリアの努力を知っていたので、喜びも大きい。
呆然とするサリアは、フィーナに成されるがままだ。
「よくやったな」
と、カイルも結果を受けて入れている。
「これでクラス落ちもないだろう」
――とつぶやいて。
(それは防げたけど……)
声が出ないほど、サリアの驚きは大きい。
ちょっと待って、本当にちょっと待って。
マサトからの指導を受けて、勉強を頑張った。
マサトの指導は、サリアがこれまで受けていた理念と異なる発想から始まっているので、最初が大変だった。
最初をきちんと理解して、会得できれば、あとは慣例にならった学びの繰り返しなので、苦ではなかった。
兄の教え方と似ている部分も多かったからだ。
そうしたマサトの指導を受けて、自分自身でも実力が付いている意識はあったが――いきなり三席となる実力ではないとサリアは考える。
今のクラスの上位になるだろうとは思っていた。
その程度の認識だった。
それが――いきなり上位クラス同等の成績?
サリアは担任以外の教師に、張り出された成績が確かなのか訊ねた。
担任を探しても見つからないので、他の教師陣に聞いての返答だったのだが。
返答はどれも、肯定するものだった。
後に、サリアのクラス担任、クレア・キャンベルが中央の役人に拘束されたこと、彼女が行った不正が、セクルト貴院校を大きく揺るがしたのだった。
期末試験のサリアの成績を見た生徒の反応は、二つに割れた。
「やっぱり」との肯定派、「ありえない」との否定派だ。
それまでフィーナに次ぐ女性徒の次席だったベルは肯定派だ。
――というのも、小児校、中児校時代からサリアを知っていて、入学試験、中間試験の結果に違和感を持っていたからだ。
サリア個人を認めている者は「肯定派」で、サリアの父、ガブリエフの行いを煙たがる家の子は
「否定派」だった。
サリア本人も戸惑う試験結果について、数日後、異例の説明が成された。
それにはサリアの担任、クレア・キャンベルが関わっていた。
説明は各クラスの担任から成された。
サリアのクラスだけは、クレア・キャンベルが不在の為、ダードリアが代行した。
「先日行われた期末試験で、教師のクレア・キャンベルの不正が発覚しました」
それは生徒の解答に、クレアが手を加えたというものだった。
クレアの素行については、以前から特定の生徒を贔屓するとの話が上がっていた。
偶然教室の側を通りかかった教師、用務員、学校関係者など、貴院校職員からもたらされた情報だった。
そうした話は一過性でなく、継続して話題となり続けた。
貴院校側としても看過できず、異例の「一週間担任交代」を行って、表向きは「教師の学びの為」、実際はクレアの指導方法の確認、クレアが受け持つ生徒の実力をはかった。
クレアはフィーナ達のクラスを受け持ち、サリア達のクラスはダードリアが受け持った。
成績上位者を受け持つには、それなりの実績が必要らしく、クレアはフィーナ達のクラス担当となって、喜んだという。
確かに、一週間は上機嫌だった。
クレアの指導方法に関しては、交代期間終了後、生徒へのアンケートで確認された。
アンケートはどれも「わかりにくい」との評価だった。
対して、ダードリアが受け持った生徒への感想は「評価と現実との差がある」だった。
生徒の評価に対して、担任の主観が大きく影響しているのでは?
――との懸念があった。
しかし、教師の評価は、試験結果に関係ないはずだ。
――ふと、誰かが気付いた。
クレアの評価順と、生徒の試験成績結果順が同じだと。
担任からの生徒への評価は試験成績以外を見るものなので、全く同じなど、ありえない。
そうして疑われたのが、クレアの「解答用紙改竄」だった。
答案用紙には、入学試験と同じく、身代わり防止用の魔法が施されている。
――例外がある。
採点をする教師は、解答に手を加えるため、免責される仕組みになっていた。
「まさか」と否定しつつ――「もしかして」との懸念から、貴院校の校長、教頭、学年主任であるダードリアによって、策を講じた。
先にクレアのクラスの解答済み答案用紙のダミーを二部、準備しておいて、一部は教頭が保管、ダミーの解答用紙を通常どおり職員室で保管する。試験当日、集めたクレアのクラスの解答用紙は校長が保管した。
書き溜めできてるので、本日二度目の更新です。
 




