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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第七章 伴魂とこの世の理
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44.魔法の作用 32


 サリアの担任は、事前の周知はなかった。


 それは「本来の姿を見るため」ではなく「自分のいいように配点する為」に思えてならなかった。


 ダードリアの話を聞いて、フィーナはすぐサリアに自分のクラスの状況を伝えた。


 サリアは驚いたものの、動じる様子もなく「大丈夫よ」と微笑んだ。


「先生に手心加えられても関係ないから」


 不敵に微笑むサリアは、自分の成績への自信にあふれていた。


「大丈夫なのか?」


 フィーナの話を聞いて、カイルはサリアを心配した。


 フィーナは、にっと微笑んだ。


「マサトのしごきに耐えられてるもの」


 魔法の鍛練で経験しているカイルは、その一言で理解した。


「なら、大丈夫だな」


「そうそう。大丈夫大丈夫♪」


 明るい口調でフィーナが告げた時、わっと校庭から歓声があがった。


 木枠の中で燃えていた炎が一段と高くなり、周囲を照らす光が増したのだ。


 側にいる人の表情が炎の揺らぎで分かりにくかった生徒たちも、昼の明るさと同等になった状況を歓迎した。


 元々、木枠内の薪に仕組まれていたものだという。


 仕組みの発動は、同時に別の意味もあった。


「ダンスタイム――」


 知っているカイルがつぶやく。


「ダンス、タイム?」


 首を傾げるフィーナにカイルが説明した。


 いつの頃からか生徒の間で、恋人関係の者同士、もしくは恋人未満の者同士が、貴院校卒業後、いずれくる社交界デビューに向けて「ダンスの練習」と称して火を囲って踊るようになったという。


 相手がいない者は、後方に下がっていた。


 後方に下がった者同士の中でも「この機会に」と意中の生徒に声をかけて、了承を得られれば前方でダンスをする――。


 生徒の中で隠れた告白イベントとなっていた。教師陣も黙認している。


「へー。そういうのあるんだー」


 踊る生徒達をフィーナは眺めている。


「……いいのか?」


「なにが?」


「ここに居て――火の側で、誘いを待たなくて」


 目を瞬かせたフィーナだったが、カイルの意図を察して否定する。


「だ、だから――そんな人、居ないから」


「そういえば、ダンスの練習は大丈夫か?」


 カイルが訊いたのは、スーリング祭を見越してのことだった。


 学年の首席と次席が参加するお披露目の場に、来年もフィーナが参加するだろうとカイルは考えていた。


 フィーナはダンスに苦戦していた。 


「大丈夫。練習しているから」


「……本当か?」


「試してみる?」


 フィーナの言葉を受けて、カイルはフィーナに手を差し伸べた。


 ダンスを誘う仕草だ。


 挑発的な笑みを向けるカイルに、フィーナも不敵な笑みを浮かべて、その手をとったのだった。


 教室の空いている場所でダンスを始める。


「大丈夫」と告げたフィーナは、言葉通り、苦になくステップを踏めている。


 想像以上の上達に、カイルが驚いたほどだ。


 スーリング祭のたどたどしさが嘘のようである。


「ザイルと練習してたから」


 フィーナは「必要最低限できればいいんじゃない?」と思っているのだが、ザイルに言葉巧みに促されて練習していた。


 セクルトに入る前は身長差でザイルが練習相手では難しかったが、今ではどうにか踊れる身長差にまでなっていた。


 カイルはザイルの名を聞いて、一瞬顔をしかめたものの、フィーナが気付かないうちに表情を元に戻した。


「ザイルとは仲がいいんだな」


「昔から知ってるからね~」


「……もしもの時は、ザイルとの婚姻、考えているのか?」


「……え?」


 驚いてカイルを見ると、カイルは静かにフィーナを見ている。


 訊かれた内容と、カイルの眼差しにドギマギしながら否定した。


「ないない。

 ザイルって第二のおじさんって感じだし」


「……そこは「兄」だろ。年齢的に考えても。

 ザイルが拗ねるぞ」


「年齢とかじゃなくて。かまい方がお父さんの弟の、カシュートおじさんに似てるの」


「叔父がいるのか」


「おじいちゃんの諸国散策に、無理矢理同行させられてるから、しばらく会ってないけどね。

 私もセクルト卒業したら、やりたいことあるし」






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