表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第七章 伴魂とこの世の理
370/754

39.魔法の作用 27


「王女様に野蛮なものをお見せするのはいかがなものかと」


 告げるオリビア自身は、騎士の衣服に身を纏っている。


 柔和な態度を見せつつ、けれど一線を画している――。


 ――そうだ。これが本来、とられるべき対応なのだ。


 オリビアと同じような対応をした騎士団は、他にいくつか存在した。


 後で聞き知った情報によると、それらはオリビアと親しい長が統括する団とのことだった。


 第一王子ルディ、第一王女オリビア、第二王子カイル。


 成り行き上、全ての王子王女と対面できた。


 ユーファが認めるのは、第一王女、オリビアだけだ。


 ルディもカイルも、危機意識が低いと感じる。


『なんでこんな平和ボケしてる国が、他の国から恐れられてンの?

 うちの兵の方がよっぽど強いと思うけど』


「それは――わからないけれど、簡単に考えられないのも事実よ。

 言われていたとおり、国民誰もが初歩の魔法は使えるようだから。

 いざというときは戦力になると考えると――うちのような、魔法を使えない国民が大多数の国からすれば、脅威に他ならないわ。

 それに――この国は、どこもかしこも、魔力や精霊の気配が色濃いのよ。

 攻撃を受けた時、どれほどの力で対応してくるのか。

 フィーナのような子が、他にいる可能性も否定できないし。

 退けるだけでおさまってくれるのか、それとも寝ている子を起こす事態になるのか。

 他に攻め入ろうと思っていないのだから、変な刺激を避けようとしているのが、実情でしょうね。

 ……ただ、他国からどう見られているのか、この国自身きちんと把握していないみたいだけれど」


『だからアブルードも手を出しにくいんだぁ……』


『むー』と考えるリックに、ユーファも「そうね」と同意する。


 同意しながら、ユーファは「そう言えば」とつぶやいた。


「どうしても腑に落ちないのだけれど……神聖国と名高い国だから、国王陛下や王族の方々から、その気配を感じると思っていたのだけれど、それほどではないのよね。

 庶民というフィーナの方が、眩しいほどだったわ。

 それに、この国で伝わる初代国王の話に、おかしなほど精霊や神の話が絡んでいないのよ。

 隠されているのではと思えるほどに。

 それに……近年、小国が攻め入ったものの、大敗した話を聞いていたのだけれど、誰も知らないのよね……」


 考え込むユーファに、考えるのを放棄しているリックが『けどさ』と話題を転じた。


『魔法、教えてもらえてよかったね。フィーナは……メチャクチャなとこあったけど、わかりやすかったし』


「そうね。その点は感謝しないと」


 言いながら、ユーファは考える。


「うちに欲しいくらいよ。引きぬけないかしら」


『それは難しいよ。

 側にいてくれたら、良い先生になってくれるのは確かかもね。

 おっちゃん、教えるのヘタだったもん』


「『おっちゃん』だなんて、言わないで」


 ユーファは憤慨する。


「カシュート先生、よ」







 実践室でユーファの鍛錬が終わったのを見計らって、フィーナはしこたまカイルに怒られた。


 謝るしかないフィーナだったが一応「百回の実演のため、時間短縮のため」と弁明する。


「律義に100回しなくても、ユーファ王女なら複数回こなせば理解してくれたはずだ」


 カイルの意見に「そうだったのかな?」と首を傾げたが、今回は自分の否を認めて、フィーナは謝り続けた。


 カイルを含む、周囲の人間に何度も言われていた。


「目立つことをするな」

「変わったことをするな」

「事前に相談しろ」


 その全てを破っているのだから、怒られるのも当然である。


 カイルの苦言を受けて反省していたものの、その時は第二王妃、サラの腕輪が気になって気もそぞろとなっていた。


 口数少なく、落ち込んだ(と見えた)姿に、カイルも反省したと判断して、フィーナに念押しをした後、解放した。


 フィーナはマサトと寮に戻る道すがら、腕輪の話をした。


 その翌日。


 文化祭フェシューレが二日間開催され、各クラスが独自に研究したもの、作った物を発表する場となった。


『文化祭まんまだな』


 情景を見たマサトが、そうつぶやく。


『飲食物は限られて、見世物はないが、各クラスの担当を当番制にして、当番でない者は他のクラスを見学に行けるところは同じだ』


 ――と。


 マサトのいう「文化祭」が以前の世界のことだと、フィーナにもわかった。


 ふっと脳裏をよぎる景色が、今、目にする情景と重なる。


 制服姿の生徒と思しき男女が、楽しげに騒いでいる。






ユーファが口にした名前。

過去に出ています。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ