表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第七章 伴魂とこの世の理
369/754

38.魔法の作用 26


『フィーナもそういうの、繰り返してきたんだ。

 今も時々は前詞(アンセル)唱えて、魔力の流れを確認してるから』


 ユーファは「劣っている」と言われているようで釈然としなかったが――今は教えを請うている立場なので、渋々試してみることにした。


 意識を集中させていたが――胸の奥がもやもやする。


『ユーファ~。雑念多いよ~。今はこの子とアイツの言うこと、試してみようよ~』


 伴魂のリックが、肩からつかまり立ちして、ユーファの頭にぺったりと頭を乗せて、助言する。


 言われてユーファもハッとした。


 ふるふると頭を振ると、意識を切り替えることに集中した。


 余計なことは考えず、魔法に集中する。


 ――久しぶりに前詞(アンセル)を唱えた。


 唱えながら、一つ一つの言葉に注意して――魔力の流れも意識した。


「――弾飛(スニーフ)


 呪文(ルキ)を唱えた時。


 自分でも驚くほど、するりと事象が発生した。


 肩すかしを受けた心地を感じるほどに。


 驚いて、自分の手を見てしまう。


「すごいです。すごく綺麗でした」


 喜んでぱちぱちと手を叩くフィーナを、ユーファは疲弊が色濃く残る意識で、ぼんやりと眺めた。


 ――敵わない。


 そう、思ってしまった。





 ユーファの疲弊が大きくなったので、鍛練はそこで終了となった。


 呪文(ルキ)だけで唱えるようになるタイミングをユーファが訊ねると、フィーナは困った顔をしてマサトに助言を請う。


 マサトは『俺にもわからん』と首をすくめた。


「実演を見れるのなら、助言できるのですが……」


 フィーナも明らかな概念はない。


「何となく」でこれまでも来ていた。


「私が呪文(ルキ)だけでするようになったのは、前詞(アンセル)を唱えるのが面倒だったからなんですよね……」


 前詞(アンセル)を唱えずとも、魔力の流れは体に染み付くほど理解しているのだから、省略しても構わないのでは。


 そう思って省略を始めたのだ。


呪文(ルキ)だけを唱えた時、前詞(アンセル)を唱えた時と同じ感じだったら、大丈夫ではないでしょうか」


 それ以上は、私にもよくわかりません。


 そう、フィーナは告げた。


「あれほどの実力を持つ者が、学生だなんて……」


 重い体に鞭打って歩きつつ、ユーファはこぼす。


『あれは……あのねーちゃんが特別すぎだと思うけど』


「特別……そうね。

 伴魂もそうだけれど、あの子自身が普通ではないわ。

 本当に、この国の誰も気付いてないのかしら。

 あれほど強く精霊の気配を纏って――加護を受けているというのに。

 あの子に比べたら――」


『ねぇねぇ。本当にこの国、そんな強い国なの?

 み~んな、やわやわな気配なんだけど。

 騎士団くらいじゃない?

 戦力ありそうなの』


「騎士団……そうね……」


 リックの言葉に同調しながら、ユーファは眉をひそめていた。


 騎士団を見学したいと駄目もとで申し出たが、すんなりと許可が出た。


 貴院校見学の許可が降りた時も正直驚いたが、騎士団見学許可は驚きどころではない。


 この国の危機管理意識を心配してしまった。


 守りの要を、他国に簡単に見せていいのか。――と。


 そうした中、見学した騎士団は、統括する長によって、対応がまちまちだった。


 実力を鼓舞して来る団、明らかに実力に見合わない力を天狗となっている団。


 日々鍛練をしているので、庶民より武力があるようだが――。


 そんな中、第一王女、オリビアが騎士団を統括していると知って驚いた。


 驚きながらもユーファは自分の考えに近いのではと思えて、親しみを感じていた。


 オリビアは王族らしいもてなしで、ユーファを迎えた。


 ――王族らしく、自身が持つ騎士団には触れぬように。


 オリビアの側には、若草色の髪の青年と、艶やかな深い蒼の髪の、オリビアと同じ年頃の女性が控えている。


 二人は終始、オリビアの側に付き従い、ユーファ達を警戒していた。


 オリビアは王女らしく、優雅な物腰、所作でユーファを歓迎した。


 ――歓迎が表面上であることは、ユーファも次第に感じ取っていた。


 騎士団を見てみたい、鍛練の様子を見せてほしいと告げても、オリビアは丁重に断った。







久々。

回想場面ですが、オリビアとアルフィード登場です。


閑話休題。

マサトとリックだったら。

ペットとしてはリックが側に居てほしいです。

マサトはうるさそうなので……。

(唐突に思ってしまった戯言です)

分別のあるいたずら小僧は好きなのです~。(前も言った)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ