29.魔法の作用 17
マサトはユーファに告げて、話を戻した。
『魔法の概念は話した。
その理念からすると、人だけで魔法を現象たらしめるってのは、ありえないんだ。
さっきのフィーナの疾風遊戯を感嘆するほど、人だけで発動する魔法がショボイとしても、人だけで成り立たせる方がありえないから』
マサトの言葉に、ユーファは俯いて、記憶をたどっていた。
「なにぶん、我が国でも希少な存在で……。
隔離されているので、私も拝見したのは数えるほどなのです」
「王女様でも、ですか?」
「王族と言っても、わたくしは二王子三王女に次ぐ、第六王女にあたります。
母方の身分も中級貴族ですので、大した権力は持ち合わせていないのですよ」
苦笑交じりに告げるユーファを、リックが何とも言えない表情で見上げていた。
ぎゅっ、とユーファの腕をつかんで、顔を隠すように押し当てている。
(――『……ごめん?』)
(――「え?」)
(――『あ……悪い。チビ助の感情が流れてきて……』)
マサトは、意図せずリックの感情を感じ取った。マサトが感じ取った感情が、フィーナにも伝わってきた。
マサトがリックの気持ちを理解しようとしていたからだろう。
マサトに伝わったリックの感情がそのまま伝わってきた。
元々、ユーファは人の目を集める存在ではなかったのだが、リックの存在、能力が明らかとなると、野蛮だと蔑まれるようになった。
サヴィス王国の民からすれば、ユーファの魔法はつたないが、それでも、クレンドーム王国では希有で、威力も段違いだ。
そうしたユーファを持ち上げる者もいるが――総じて認められないのは、ユーファが唱えるのは治癒の魔法でないからだ。
クレンドーム王国の魔法を使う者は、治癒魔法を成していた。
ユーファはリックの助力があっても、治癒魔法はできなかった。
リックは自分がいるからユーファが悪く言われると、気に病んでいる。
マサトを介して流れてきた感情で、フィーナはユーファとリックの自国での立場を理解した。
(――「この子? 僕の大事な大事な友達だよ」)
不意に流れてきた、中年男性と、彼の膝もとで気持ちよさそうに寝そべっているリス。
木の上に座って、膝の上のリスを愛おしげに撫でる、穏やかな男性を見上げて「でも――っ!」と、ユーファが声を上げていた――。
「噂で聞いただけで……はっきりとしないのですが……」
呟くユーファの声に、フィーナはハッと、意識を戻した。
驚きを覚えつつ、ユーファを見る。
ユーファは驚くでもなく、マサトに問われたことに答えようとしていた。
マサトとリックを介して伝わってきた、ユーファの記憶と感情に、フィーナも驚いてた。
こんなこと、今まで経験したことがなかった。
マサトがリックに意識を向け、そのマサトにフィーナも事情を把握しようと意識を向けていたからだろうか――。
ユーファの感情に直に触れた心地で、眩暈に似た陶酔感を覚えた。
ユーファの声で意識を切り替えて、彼女の話に耳を傾ける。
「何かしら、道具を用いているとは聞いています。それは確かです。
それが何かはわかりませんが……魔力を宿したものだと、噂では聞いています」
『あ゛ー……。
わかった。大丈夫だ』
ユーファの曖昧な話を聞いて、げんなりとしながらすぐに理解したマサトに、ユーファの方が驚いていた。
「わかったのですか?」
『多分な。
そういうのも、見聞きしたことあったから。
……にしても、厄介なのに手を出してんな』
「……お願いばかりで申し訳ないのですが、あなたが想定していることを教えてもらえませんか?
わたくしの力が及ばないにしても、自国のことです。
わたくしも把握しておきたいのです」
『対等でないと理解できてるだけ立派だけど。
教える義理はねーよ』
ここに来て、にっこり人のいい笑みを浮かべながら、すっぱり斬り捨てたマサトに、フィーナは驚いた。
ユーファも目を見張ったものの、袖を引くリックに気付いて、自身の伴魂に視線を送る。
ユーファとリックは互いに見つめあった後、ユーファは瞼を落とすと、小さく息をついた。
昨日は更新できなくてすみません。
所用が立て込んでました。
そして、今、めちゃくちゃ喉が痛いです。
乾燥で喉がやられて風邪ひくタイプです。
風邪でしょうが、この時期だと、コロナ疑われるのではないかと、ちょっと怖いです。
市販薬でしのごうと思ってます。
うがい手洗い、してたんだけどなぁ。
喉奥の、上部と下部がくっつきそうになる感覚が、嫌で嫌でしかたありません。
洗濯物。部屋干しして加湿したい~。(←私には一番効果ある)
(洗って外干しして乾かしたばかりだから、洗う物がない~。涙)




