28.魔法の作用 16
ユーファはマサトの話を聞いても、理解できなかったらしく、困惑した表情を浮かべた。
一緒に話を聞いていたフィーナも「……んん??」と首を傾げている。
わかったような、わからないような……。
そうした主の感情を、マサトは感じていた。
リックはユーファに、自分が異世界からの生まれ変わりだと――この世界に来る前の記憶も話した事があると、伴魂同士の意識下の話で聞いたから、理解できるだろうと思ったのだが……。
フィーナの様子と合わせて見ると、概念を理解しにくかったようだ。
それは仕方ないが。
『ナニお前まで『わかりません』って顔してんだよ』
リックの額に、尻尾を垂直に降り降ろす。
ピシリと軽い叱責を受けて『あたっ。』とリックは小さく声を上げた。
『基本中の基本だろーが。何学んでたんだよ、あの国で』
『覚えてないよ、そんな昔のこと……。あの時もわけわかんなくて、何となくでやってたんだから』
『そういや……向こうで訓練受けてたって言ってたけど、どれくらいだ?』
『一年か……二年、だったかな』
『この世界に来る前の年は覚えてるか?』
『え~? ……来年、小学生だって……話してたような……』
『なるほどな』
リックの話を聞いて、マサトは『それなら仕方ない』と息をつく。
事情がわからないユーファとフィーナに、マサトは簡単に説明する。
『よそからこの世界に転生したヤツは、よそで亡くなったころの記憶から始まってんだ。
その分の知識を持った上で、この世界での生活が始まる』
「リックは幼くして……だったので、あなたほどの理解速度ではない、と言うことですか」
『そういうこと。ちなみに俺は十七だった』
十七。
それがマサトが前の世界で亡くなった年齢なのだろう。
フィーナも初めて聞いたことだった。
マサトがこの世界に来る前の話は――何となく、聞きにくかった。
『魔法は、俺とチビ助のような、この世界では異質の存在を間に挟むことで、現象ならしめてる。――ってことで、わかったか? これでわかんないなら、説明のしようがないが』
告げるマサトに、はた、と気付いたフィーナが「ちょっと待って」と声をかけた。
「ってことは――伴魂って、元は他の世界で生きてたってこと?」
『生まれ変わりで言えばな。肉体は滅んでも残った精神――魂が、新しい肉体に宿って、新たな生を始める。それが異世界をまたいだってことだ』
「えと――じゃあ、伴魂って、元はみんなマサトみたいな人なの?」
この国、サヴィス王国の国民は、全国民、伴魂を所有している。
それほどの数の伴魂が、フィーナが知らないだけで、マサトと同じだと言うのか?
マサトのような、異世界転生者であるというのか。
思いながら、違和感も感じている。
フィーナが知っている知人、友人、家族の伴魂のほとんどが、マサトとは異なると。
彼らの伴魂は獣に近く、知識を保持し、主と言葉で意思の疎通を交わせるとは思えなかった。
フィーナの言葉を聞いて、マサトは主の思いを察した。
『あー……。悪い、説明がまずかったな。
伴魂だけじゃなくて、この世界の、瞳の色が黒以外の、魔力を保有する動物は、異世界からの生まれかわりってのは本当だ。
転生するのは人だけじゃない。他の世界の動植物が、転生している。
本来、この世界に生まれた時に、この世界に来る前の記憶はリセットされるんだが――アブルードは伴魂と成りえる動物を召喚して、生まれ変わる前の記憶を強制的に引き出してる。
奴らが欲してるのは、元は人間だった、伴魂と成りえる動物だ。
戦力として、申し分ないからな。
――このチビ助、こうやってボケっとしてるけど、アブルードに居続けたら、出来が悪くてもエリートだから。
それほど、元が人の転生者は少ないんだ。
……まあ、アブルードに居続けたら、出来が悪いの、許してくれなかっただろうけど』
「あああ~~~~!」
マサトの話を理解しようとして、真剣に話を聞いていたフィーナだったが、断念して、頭を抱えて声を上げた。
「ごめん、わかりやすく話してくれてるんだろうけど、付いていけない。
わかるような、わからないような。
わかった気がしても「あれ?」って、わかんないことが出てきて混乱してる」
ユーファは、話は聞いているが、理解は諦めていた。
マサトの話をそのまま覚えておこうと気概は感じる。
『ヤンチャなガキでも、貴重な存在ってことを理解してくれたらいいよ』
設定的な、小難しい話が続いてます。
すみません。
 




