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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第七章 伴魂とこの世の理
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27.魔法の作用 15


『こいつ、アブルードではすごかったんだ!

 意地悪なヤツに戦績取られたのもあったけど、それ含めたら、五本の指に入るくらいの凄腕――。

 ――っ、いたっ!』


 ビシリ。


 ――と。


 マサトは尻尾を横薙いで、リックの額を叩く。


 まともに食らったリックは『い~~~~~っ!』と顔を抑えて悶えていた。


『な――なにすんだよ!』


『うるせー。

 ――アブルードの話はしたくないんだ。

 今は仕方なくイヤイヤ話してんだから、余計な話はすんな。イライラする。

 ――苛立ち我慢してんのが爆発してもいいってんなら、止めねーけど』


 すごまれてリックも反論できず『う゛~~~~』と、唸りながら、ユーファの腕に体を隠した。


 マサトは念押しに、一睨みして、ユーファに視線を戻した。


『俺も教えて欲しい。

 伴魂なしで人だけで魔法が使えるなんて、初めて聞いた。

 どういう仕組みだ?』


 ユーファとしてはマサトの質問が意外だったのだろう。


 戸惑ってリックを見た。


 リックは『えっとぉ~……』と、思慮をめぐらせて、主に変わって返事をした。


『この国の魔法に比べたら、たいしたことないよ?

 気にするものでもないと思うけど』


「……何か簡単な魔法を、見せてくださいませんか」


 その方が説明がしやすいと思うので。


 そう告げるユーファの言葉を聞いて、フィーナとマサトは顔を見合わせた。


 意識下の意志疎通で、会話とするまでもなく、何となく、互いの考えていることを感じとって、フィーナはそれを体現した。


「……疾風遊戯ヴェルヴィン


 効果を抑えた風を起こして、近くの木の枝を揺らした。


 フィーナが掲げた手の先で巻いた風が、葉と枝を揺らす。


「これでいいのかな?」と戸惑い気味のフィーナに、ユーファは感嘆し、リックは『へー。やるじゃん』と呟いた。


『威力ある魔法はさ、確かにそれなりの力がないとできないけど、あれって力任せにやれば何とかできちゃうんだよ。

 逆に力ある奴が微力な効果を出すのって、技術がいるんだよな。

 これが精いっぱいってなら、話別だけど。

 そうは見えないし』


「確かに、わたくしの国にもごく限られた者ですが魔術を使える者もいます。

 その者が、先ほどと同じような魔法を成したとしても、微風程度でしょうし、数日、寝込むでしょう」


『そりゃそうだろ。世のことわりから外れてることしてるんだから。

 やっぱ、反動激しいか』


「世の……ことわり……?」


 首を傾げるユーファを見て、マサトは『……ん?』と眉をひそめた。


 マサトはリックに目を向けると、リックは首を傾げてじっとマサトを見た。


 伴魂同士、しばらく見つめあったあと『なら、話してもいいな』とマサトは呟く。


『ユーファには何でも話していいよー。俺の主なんだから』


 ユーファに全幅の信頼を寄せているのだろう。


 誇らしげに笑うリックを確認して、マサトはユーファを見た。


『基本、人単体では魔法は成し得ない。

 それはこの世界の理だ。

 けど実際、魔法は存在する。

 この国――サヴィス王国で言えば、伴魂を媒介して魔法を発動させている。

 伴魂がいなければ、人単体では魔法は使えない。

 ――伴魂と言う――この世の理から異質なものを介して、異質な事象を起こしている。

 リックから聞いただろ?

 生まれ変わる前の話を。

 アブルードでの記憶の前にある、人としての記憶を。

 この世界とは異なる世界の話を。

 伴魂と成りえるのは、魔力を持った動物だ。

 黒以外の瞳の色が、魔力を持った動物だとされているが、あれはちょっと違う。

 黒以外の瞳の色を持つ動物でなければ、伴魂になれないってのは本当だ。

 けど、黒の瞳でも、この世界の動植物は、すべからく魔力を身の内に持っている。

 では、瞳の色の違い、伴魂に成りえるか成りえないかの違いは何か。

 ――瞳の色が黒以外の奴は、他の世界からの生まれ変わりなんだ。

 それが、伴魂となれるかどうかの違いだ。

 他の世界からの生まれ変わりの動物は、瞳の色が黒以外が多い。

 他の世界からの生まれ変わり――異世界転生って言ってるけど、異世界転生したヤツは、この世界の理から少し外れた異質な存在だ。

 異質な存在を介して、本来ありえない事象を起こす――。

 それが魔法だよ』





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