24.魔法の作用 12
フィーナはしゃべる伴魂に再度驚いていたが、躊躇なく飲食する姿にも驚きを隠せずにいた。
ハロルドの件が脳裏をよぎって、魔力不足を懸念したのだ。
フィーナの心情はマサトにも伝わった。
『心配すんな。魔力は足りてるよ』
フィーナに告げるマサトに、ユーファは首を傾げた。
どういうことかと訊ねる視線に気付いて『……あー……』と尻尾を揺らして考えた後、先に確認をとった。
『無礼講でいいんだよな?』
「ブレイコウ?」
『えっと……身分関係なく、上下関係ない態度と話し方、していいんだよな?』
「もちろん」
ユーファは意気揚々と頷いた。
「今日は気兼ねない話をしたいと思ってるの。
あなたがたも、気にせず、凝り固まった敬語もはぶいて話してちょうだい」
それを聞いて、マサトは話を続けた。
『伴魂は基本、主の魔力を生命の糧とする。
伴魂となったら、食べ物を口にしないようになる。
伴魂が経口摂取するのは……主の魔力が不足してるからだ』
マサトの話に、ユーファは軽く目を見張って自身の伴魂を見た。
リックは『ふえ?』とよくわからない表情で首を傾げている。
『――と、まあ、これがこの国の基本なんだが。
こいつみたいに、必要ないけど食べたいヤツもいるんだ。
王女様とソイツのはバランス取れてるから大丈夫だよ。
ソイツが飲み食いすんのは、単に食い意地はってるだけ』
ユーファは伴魂と魔法に関して、知りたがっていた。
クレンドーム王国には、ユーファと同じく魔術を使える者、伴魂を連れだっている者がいないと言う。
ユーファの意を汲んで、マサトは、サヴィス王国で基本的に知られている伴魂、主、伴魂の関係、魔法に関してあらましを話した。
話していいのかと、フィーナはハラハラしていたが、後にマサトはこう告げる。
『この国の誰でも知ってることだから、隠すことでもないだろ。俺たちでなくても、誰に聞いても同じ答えなんだから』
それもそうだと納得するフィーナに、マサトは肩をすくめた。
『一般常識しか話してねーけどな』
サヴィス国民だったら誰でも知っている内容を話した後、マサトはユーファに訊ねた。
『この国では、子供のころに契約で伴魂を取得すんだけど――王女様は?』
「私は……庭で瀕死だったこの子を見つけてから……」
内容は、フィーナがマサトと出会った状況と酷似していた。
庭でリックを拾い、なぜか気を失って倒れて。
気が付いた時にはリックが側にいて、話しかけて今に至るのだと言う。
小動物が人の言葉を話すのは、ユーファもただ事ではないと思って、他の人の前で話すのを禁じた。
その後、リックを通じて魔術を使えるとわかって、サヴィス王国を思い出した。
神々と精霊の加護の厚い神聖国サヴィス王国。
かの国の国民は、獣を使役して魔術を成す――。
遠い昔は戦争もあったらしいが、今は国民がすべからく魔術に秀でた国に、戦を挑もうとする愚国はない。
(神々と――精霊の加護……)
当の国民であるフィーナが聞いたことのないものだった。
他国ではそのように見られているのか。
『俺達と同じだな』
ユーファとリックが契約しただろう経緯を聞いて、ため息混じりに呟くマサトに、ユーファが小さく目を見張った。
「あなたたちも……? けれど、子供の時に契約でと、さきほど……」
『契約交わすのが普通なんだけどな。
何にでも異例はあるんだよ。他にも、そういうやついるし』
姉のアルフィードを言っているのだろう。
マサトは少々考え深げな表情で思案を巡らせたあと『念のため』と契約に関して話を続けた。
『契約ってのは、互いの魔力を交わすことなんだ。
子供には難しいから、特殊な紙を用いて、伴魂となる小動物の魔力を込めて、その紙面に子供が名を記す。紙に体が触れてれば、子の魔力も反応するから、そうして紙面を通して互いの魔力を感じ、交わして契約となる。
魔力を交わすと、保持してる魔力の大きい方が主となるんだ。
人と動物じゃあ、当然、人の方が大きいけどな』
フィーナとマサトのように、例外もあるが、それは交わした当初、伴魂側が相手を主と認めれば、そうなりえる。
マサトはアブルードでの生活で、フィーナと魔力を交わした際、無意識でフィーナを主と認めたのだ。
『伴魂の生命の糧は主の魔力だ。
釣り合いが取れてたら心配ないが……支障があると思ったら、契約を解除した方がいい』




