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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第七章 伴魂とこの世の理
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21.魔法の作用 9


 フィーナとしても、カイルの同席は――ユーファと歓談していた様子を思い出すと、胸の奥がもやもやしたが「王族には王族」と考えると、カイルが妥当だと思えた。


 フィーナの言葉に、ユーファはきょとんと目を瞬かせた。


「わたくし、あなたとは互いに一人でお話しするつもりでしたけど」


「王女様!?」


 護衛二人も初耳だったのだろう。


 とんでもないと慌てふためく二人に、ユーファは「あら」とにこやかに――それでいて威圧感のある笑みを浮かべた。


「わたくし、貴院校へは一人で見学すると言ってなかったかしら。

 なのに、勝手について来たのはあなたたちでしょう?

 もともと、使節団の一員として赴く際、護衛も側仕えもいらない、一人で用を成せると言っていたはずだけれど。

 ――あなたがたの権威を汲んで、ここまで譲歩したのだから、もうよろしいでしょう?

 ――お願いだから、もう邪魔しないでちょうだい。

 あなたたち二人が付いてくるものだから、動きにくくて仕方なかったわ。

 一人なら――こうしてすぐにお話しできたでしょうに」


「ですが……」


「空耳かしら。

 何か聞こえたようだけれど。

 ……ああ、もしかしてだけれど、わたくし一人では自分の身も守れないと思っているのかしら。

 あなたたち二人がかりで、わたくし一人に敵わないというのに。

 奢りも過ぎると、腐臭を纏いますこと」


「た――盾にはなれますっ!」


「――盾……」


 反芻したユーファの表情が、一気に冷たくなった。


 それまで便宜的にも浮かべていた笑顔まで、すっと消える。


 身をすくめた護衛二人同様、フィーナも体を強張らせて肩をすくめた。


「いつ人の盾を求めた? 戦場でもない場所で、わたくしが人命を散らすのを望むと言うのか」


「も――申し訳ございません!」


 声を荒げることはなかったが、静かにすごむユーファに、護衛の二人は直立不動で青ざめ、揃って頭を下げる。


 その後、ユーファに言われるまま、今後は単独で行動する時もあると了承して、二人はユーファとフィーナから距離をとった。


 離れた二人を確認したユーファは――。


「これで信じてもらえたかしら」


 と、それまでの威圧感ある雰囲気をがらりと変えて、女性らしいにこやかで花のある、これまでのユーファに戻って、フィーナに告げた。


 それまでの経緯を見ていたフィーナは。


「申し訳ございません……。私には王女様のお相手は無理です……」


 ――と。


 これまでのやり取りを目の当たりにして体を硬直させたまま、涙目混じりで訴えたのだった。






「あらあら」


 恐れるフィーナを見て、ユーファは「やりすぎてしまったようね」と頬に手を当て、首を傾げて困った様相を見せる。


「あなたに何かするつもりも不利益な状況にさせるつもりもないの。

 本当にお話しがしたいだけなのよ。

 ――なぜか、わからないって顔ね。

 もう少しすれば、なぜかもわかるでしょう。

 ――その為に、二人を遠ざけたのだから」


 言って、ユーファが護衛の二人をチラリと見た時――。


 つられて二人を見たフィーナの視界の隅を、素早い何かが横切った。


『へへへ~ん♪ 捕まえられるもんなら捕まえてみ~ろ♪』


『――んだとコラァっ! 待てや、クソガキっ!』


『キャハハハっ! 怖い怖い~♪』


 笑い声をあげながら逃げるユーファの伴魂を、目を吊り上げるフィーナの伴魂が追いかけている。


 ユーファとフィーナの脚の間を、フェレットとネコが素早い追いかけっこを繰り広げていた。


『ユーファ、助けて~♪』


 ユーファの伴魂が、主に助けを求めて肩口に登る。


 くるりと襟巻のように体を巻きつけて、ユーファの肩口からマサトを見下ろして、ケラケラ笑っていた。


『てめっ! 卑怯だぞ!

 ――――――って……。

 ――――――。

 ――…………あれ……?』


 肩口に登ったフェレットを見上げて叫んだマサトは、視線の先にユーファを見て、我に返ったようだった。


 ギギギギ……。


 と、きしむ音が聞こえそうな固い動作で、自身の主に顔を向ける。


 マサトとユーファの伴魂は、人の言葉で話していた。





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