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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第七章 伴魂とこの世の理
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20.魔法の作用 8


 セクルトの教師陣としては状況を察してフィーナを休ませたいのだが、ユーファに貴院校見学を許した役人に対する手前「休ませている」と公言できない。


(意図的に体調不良……水風呂……)


 冷たい水風呂に飛び込んで体を冷やして、風邪をひいたと言えればいいのだろうが……寒いのが苦手なフィーナには、捜索の苦難から逃れられるとしても、試す勇気はなかった。


 薬屋を営む家だから、常々「体調を崩さないように」と対処する癖がついてる。


 対処しなければいいのだろうが……いつもしていることを、敢えてしないのも気持ち悪い。


 逃げ続ける大変さを我慢するか、意図的に体調不良となる苦難に挑むか――。


「むー……」


 と考えつつ、公衆トイレを出た時だった。


「フィーナ!」


 不意打ちだった。


「え?」と聞き覚えのない声に、その方を反射的に見ると、ユーファが胸の前で両手を合わせて、目を輝かせてフィーナを見ている。


「なっ……!」


 なななんでどうしてどうしてなんで!?


 動揺して伴魂であるマサトを呼ぼうと周囲を見渡しても、近くにマサトの気配を感じない。


 お手洗いの中まではマサトも同行を避けていたので、外で待っているはずだった。


 離れた場所から、フィーナの動揺を感じ取ったマサトの驚きと焦り――。


(――『っ! やられた!』)


(――「やられた!?  って、何を!?」)


(――『王女様の伴魂に注意してた。王女様の伴魂はこっちにいる――』)


 マサトの言いたいことを、フィーナは察した。


 マサトはユーファの伴魂の気配がわかるから、その察知能力でユーファとの接触を回避しようと言っていた。


 ユーファを見ると、確かに、首元に纏っていた伴魂の姿がない。


 マサトはユーファの伴魂を見張っていた。


 ――ユーファの伴魂が、主と別行動をとったと知らずに誘導されたのだ。


(――『ぁああっ!? ……んだと、コラぁっ!』)


 マサトから、苛立ちと怒り、ユーファの伴魂が、からかうようにマサトを笑っている様子もうかがえる。


 ケタケタと笑って、罠にひっかかったと、マサトを茶化している。


「リック。おいたしちゃダメよ」


 諭すように苦笑交じりに呟くユーファから、彼女も伴魂同士のやり取りを感じ取っているとわかった。


 驚いて見つめるフィーナに、ユーファは苦笑交じりで首を傾げた。


「怖がらないで。

 あなたの立場を悪くさせるつもりも、危害を加えるつもりもないの。

 少しだけ、お話しする時間をもらえないかしら」


 フィーナが否を唱えられるはずもなく。


 不承不承、了承したのだった。






 了承したものの、ユーファとの対話の前に、フィーナはいくつかの確認事項とどうしても譲れない条件を出した。


「カイル殿下を同席させてください」


 それは確認事項の部分に関連するものだった。


 フィーナの確認事項は「①いかなる無礼な振る舞いも不問にする」「②言葉づかいに礼儀、敬語なし」「③国の不利益になると思えるものなど、答えていいかどうか、わからないものについては話さない」「④以上の事項に同意した書面を交わすこと」。


 カイルの同席を求めたのは、③への対処の為だ。


 含めて、カイルが同席するなら、護衛騎士も同席するだろう。


 そうして、同席する身内を増やして置きたかった。


 ――というのも「無礼を許す」と言いつつ、反故される危険性を避けたかった点もあった。


 それらが許されるなら会談に応じると話した。


 一国の王女に対して「ふざけるな」と言われてもおかしくない条件だった。


 フィーナとしては、怒ってくれたほうがいい。


 こちらとしては、ユーファと接しないように逃げ続けていたのだ。


 ユーファも、それは察している。


 そのように、無礼な振る舞いをしないよう、避けてきた人間を捕まえたのだから、粗相くらい見逃してくれ。


 そうした思いで提示した条件だった。


 ユーファについていた護衛は、出された条件に眉をひそめたが、ユーファは「それくらい当然」とばかりにすぐ承諾した。


 ――ただ。


「カイル王子を同席――ですか」


「私もサヴィス王国民一人で応じるのは心細いので……」


 ユーファは無礼な振る舞いより、カイルを同席に難色を示すユーファが意外だったが、フィーナも引けなかった。


 ユーファ側は護衛二人は同席するだろう。


 粗相があったなかったの水かけ論となった時、フィーナ一人では太刀打ちできない。


 最低限でも、そうした状況を避けたかった。





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