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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第七章 伴魂とこの世の理
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11.人の姿をした伴魂 11


 反射的に防いだのは、カイルとフィーナの二人だけだった。


 防いだ二人を、セクルト貴院校の生徒、教師陣が驚きの目で見ている。


 カイルは自身の立場上「護衛の術を身に着けている」と言いわけできるが、フィーナの特異性がまた知られることとなってしまった。


 反射的に対応しただけでなく、前詞(アンセル)を唱えず、呪文(ルキ)を成した――。


 魔法を習い始めたばかりの、新入生が。


 それも、市井出身者が。


 生徒に魔法を教える教師陣でさえ反応できなかったというのに。


 フィーナはそうした視線に気付いていない。


 唐突な行動を起こしたユーファ王女と、彼女の周囲――側に居る二人を警戒している。


 二人に向けられる奇異の眼差しに気付いたカイルは歯がみしつつ、今はユーファとの話が先だろうと判断した。


 カイルは、同席するセクルト貴院校の校長や他の教師陣が対応してくれることを望んでいたのだが、被弾して戸惑う様子を見るからに、対応は無理だろうと思えた。


 ユーファは兄、ルディと会談している。


 ルディの弟であり、王子であるカイルとしては、目立たぬよう、息をひそめていたかったのだが……このような大人数が居合わせる場で「しんがりの生徒だから」を理由に何も対応しないなど、出来るはずもない。


 何より、室内に入った当初から、カイルは同席する面々の戸惑いを感じていた。


「なぜ自分たちが他国の王女と同席するのか」との思いと「王子が貴院校に在籍しているから設けられた場だろう」との胸の内を感じていた。


 外交なら、自分が前に出るべきだろう――。


 そう思って、生徒としては最下級生ながら、王族としてユーファに問いかけたのだ。


 しかしユーファはユーファで、カイルの問いに目を瞬いて、首をかしげた。


「貴校の魔術技量を測らせていただきたいとお伝えしていましたが……。

 私が使節団に同行して貴国を訪問したのは、貴国の魔術に関してお話しを伺いたかった為です。

 それも同世代の者に。

 不意を打った簡易な技に対処できるものならば、有益な話ができるだろうと、選別の方法を提案されたのですが……」


「「「「…………は?」」」」


 カイルだけでなく。


 居合わせた面々、誰しもが、王女、ユーファの言葉に目を点にした。






 室内の、サヴィス王国民の反応を見て、今度はユーファが驚き、戸惑いを見せた。


「お聞きではないのですか?」


 提案されたという方法を考えると、生徒には知らされていないにしても、教師陣や王族縁の者、護衛には話が通っているとユーファは思っていた。


 戸惑いながら告げるユーファに、室内のサヴィス王国民誰もが戸惑いをにじませる。


 室内の雰囲気に、ユーファは焦りをにじませた。


「違うのですか?」


 違うのなら、ユーファの行為は外交的に非常にまずいものとなる。


 額に小さな粒が当たっただけで、怪我をした者は誰もいないが、武力を持ち込まないと互いに思われていた場所で荒事を起こしたのだ。


 片方は会談のみ、もう片方は能力をはかる場でもあると考えていた。


 そうした齟齬があったにしても、通常、会談の場で行うことではない。


「誰にそのようなお話しをなされたのですか」


 伝達が上手くいっていなかった可能性を考えて、カイルが訊ねる。


 ユーファは側に控える二人に目配せした。言っていいものかどうか、迷っている風だったが、側の二人は「告げた方がいい」との素振りを見せる。


 二人の考えを確認して、ユーファ自身も考えた末、事の成り行きを口にした。


「ルディ殿下と会談した際、お話ししていました」


「兄上にですか?」


 ユーファとカイルは、使節団が到着した初日、王族同士で顔合わせしている。


 互いに王族だと理解している。


 カイルが告げる「兄上」がルディをさしているとユーファも理解した。


 理解したものの、ゆるく首を横に振った。


「殿下の側に控えていた、臣下の者です。

 ……あ……いえ……」


 そう言ったものの、何かを思い出してユーファは戸惑いをにじませた。


「殿下と会談の後、殿下の母君、王妃様が来室なされました。

 王妃様に従って入室した者です。殿下と話す様子から、臣下の者だと思っていましたが……」





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