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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第二章 セクルト貴院校
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6.最初の授業と伴魂と


 寮部屋の移動は、所持品の移動が必要なので(ブリジットの荷物が多いため)、初日は最初にあてがわれた部屋で就寝することになった。


 翌日、用意された白のジャケットを纏って食堂で朝食を採っていると、改めてブリジットに「本当だったのね」と言われた。


 白のジャケットは最優秀クラスの証しだと、知られているようだった。


 ――そうした処置をとった理由までは明かされていなかったが。


 朝食を終えて寮を出ると、ザイルが待っていた。


 彼に案内されて、あてがわれた教室へと赴く。


 広い校内は慣れないと迷ってしまう。


 校舎に慣れない生徒を考えての、同伴者を、ありがたく思っていた。


 二日目はいくつかの教科をこなして、午後からは伴魂と共に行う授業だと聞いている。


 ザイルはフィーナを教室に送り届けると「今日は騎士団へ顔を出すから」と城の方へ出向いていった。


 よくよく考えれば、壁で隔てられているとはいえ、宮廷の敷地内なのだ。


 オリビアとアルフィードも近くにいると思うと、少しだが安堵感を感じる。


 授業はダードリアが教室に入出して、一時限目を始めると告げて始まった。


 授業では国の歴史を学ぶ「歴学」、法律を学ぶ「法学」、魔法で使う古代語を学ぶ「古学語」を学んだ。


 どれもフィーナは中児校でも学んだことはなかったが、自身の伴魂から仕込まれて、同時に自分自身でも為になると思ったので、嫌がることなく学んでいた事柄だった。


 そうした経緯もあるため、戸惑いもなく、受け入れることができた。


 ……戸惑いも抵抗もなく、受け入れられたのは自分だけだと、後々気付くことになる。


 昼食は本来、校内の食堂でとれるらしいのだが、不慣れな新入生では食堂まで行って帰ってくるまでに迷う可能性が高いので、しばらくは教室にお弁当が配給されるとのことだった。


 食べ終えて昼休憩を終えると、魔法の授業となる。


 魔法の授業は、市井の中児校でも貴族の中児校でも科目に含まれていない。


 セクルト貴院校で学ばれる教科と位置づけられていた。


 貴族の中には独自に専用の家庭教師を付けて、学ぶ家もあるという。


 担任のダードリアに連れられて、生徒たちは魔法の訓練所へと足を運ぶ。


 開けた平地には、数メートル離れた場所に、枝木の小山が生徒の人数分、等間隔に準備されていた。


 それらを示して、ダードリアは説明を始めた。


「枝木ごとに並んで、対面している枝木を燃やしてください。点火レンカは日常生活において、誰もが行っていることでしょうから」


 魔法を使用する時は、伴魂が必要だ。


 それぞれ、自身の伴魂の具合を見つつ、調整をしている中、ダードリアはフィーナに目を向けた。


「伴魂は――」


「さっき呼びました」


「……呼んだ?」


 魔法の授業は午後からだとわかっていた。


 昼食を終えると、フィーナはネコと自身を繋ぐ「戒めの輪」の呪を軽めに唱えておいた。


 離れていても「戒めの輪」は有効だ。


 前足につけられた「戒めの輪」が軽く締まるのを合図に、ネコがフィーナの側に来るように、示し合わせていた。


 極力、姿を見せない為の策でもあった。


 訓練場につく前から、近くにいる気配は感じている。


 ふ、っとその気配がより強くなった。


「来ました。――って、うわっ!」


 側でネコの気配を感じたと思った時には、白い伴魂はフィーナの両肩にまたがって、襟巻よろしく乗っている。


「ちょっ、重いっ!」


 小声で抗議するフィーナを無視して、ネコは主の頬にすり寄った。


 フィーナの抗議はネコを目にして驚いている面々には届いていない。


 誰もかれも、初めて目にする白い獣に意識を奪われていた。


 フィーナの頬にすり寄るような甘えたところを見せながら、その実、主の耳元で小声で


『話ができるようにしてんだから我慢しろ』


と、ネコが告げる。


 フィーナは声でやり取りをするのに慣れてしまったことで、意識下のやり取りを苦手になっていた。


「それが伴魂ですか」


 担任のダードリアも初めて見るのだろう。目を丸くしてしげしげと眺めている。


 ダードリアに肯定の返事をして


「始めてもらってもよろしいでしょうか。重くて、大変なのです」


 と、多少よたよたしながらフィーナは告げた。


 肩から下ろしたらどうかと、至極まっとうな意見も出たが


「伴魂が降りてくれない」


 で通して、授業を進めることとなった。


 そして「1」の数字を持つフィーナから始めるよう、告げられた。


 言われて、フィーナは眉を寄せた。


「……生木が入ってるぽくない?」


 小声で肩に乗っている伴魂に尋ねる。伴魂も眉を寄せて同意した。


点火ランカじゃ、火が付かないだろ』


 乾燥していない生木を燃やすのは難しい。点火ランカはあくまでも火種を付けるものだ。


 家でも手伝いで点火ランカは行っていたが、枯れ草などに点火して、その燃え上がった炎で生木交じりの薪を燃やしていた。


 ランプなどは可燃性の液体が染みているから、点火でもたやすく炎は生じるのだが。


 枝とはいえ、生木は水分を含んでいる分、真逆の相性に当たる炎はつきにくいと思われた。


 ――ダードリアは枝の小山を「燃え」させろと言ったのだから……。


 考えを巡らしつつ、周囲を見渡して「先生」と声を上げる。


「この枝を使ってもいいですか?」


 数歩先に転がっていた、肘から指先ほどの長さの、中指ほどの太さのある枝を拾って、ダードリアに確認する。


「何に使うのです?」


 訝るダードリアに「集中するためです」と答えた。


 フィーナの答えを聞いて、ダードリアはなお、眉を寄せていたが「……まあ、いいでしょう」と認めてくれた。


「始め」の合図を聞いて、フィーナは小さく息をついて呼吸を整えた後、手にした枝を、自身にあてがわれた枝の小山をつい、と指して、呟くように唱えた。


「――燃焼レンショウ


 声は本人が確認できる程度の、隣のカイルにも聞こえないものだった。


 声に合わせて、手にした枝の先を弧を描くように翻して、最後は小山を指して停止させる。


 声と動作に反応するように、小山は燃え上がった。


 その様子に、ざわりと周囲がざわめき立つ。


(何か間違った……!?)


 おどおどするフィーナに、生徒だけでなくダードリアも声を失っている。


「……先生?」


 硬直し続けるダードリアにフィーナが再度、声をかけてようやくハッと我に返ったようだった。


前詞アンセルは?」


 アンセルとは、魔法を用いる際に唱える、前述――人によっては詠唱と呼ぶ類のもの――だ。


 アンセルなしに火を、しかも燃焼レンショウを起こしたフィーナに、ダードリアは驚いていた。


 ダードリアだけでなく、その場に居合わせた誰もが、驚きを隠せずにいた。


 アンセルを用いず魔法を唱える場合もあるとは知っているが、「点火」のような庶民も日常生活で使用するものに限られる。


 フィーナは後に知ったのだが、貴族のようにいくつも魔法を使う場合、点火ランカでも前詞アンセルを唱える。


 自分の中で、同じ系列の他の魔法との区別をつけるためとのことだ。


前詞アンセル?」


 聞かれて、フィーナはどう答えていいのか、わからなかった。


 燃焼レンショウ前詞アンセルは知っているが、聞かれているのは前詞アンセルの内容ではないように思えた。


 返事に戸惑うフィーナを見て、ダードリアは返答を諦めたようだった。


 他の生徒にも同じように、木枝の小山を燃やすよう促す。


 フィーナの事例を見た他の生徒から、戸惑いの声があがった。


前詞アンセルなしでですか?」


点火ランカではなく燃焼レンショウですか」


 ダードリアはそれらの質問に「どうするかは任せます」とだけ返事をした。


 次順であるカイルが前詞アンセルを用いて点火ランカを行ったことで、他の生徒もそれにならっていった。


 結果。


 木の小枝の山が燃えたのは、フィーナを除いて2名の生徒だけだった。





魔法の授業の始まりです。

授業なので、あまり常識はずれはしてないです。

常識からはずれてるのは少しだけ。

①「火をつけて」と言われたから火をつけようとする。

②「火をつけて」と言われて煉獄の火柱を立ち上らせる。←異世界転生ものでありえそう。

①を基本で、そうしようとした中で、常識はずれなことをしていく。

――というふうな展開を考えています。

身の危険を感じたら、常識なんてあっさり捨てて②の行動とります。多分。

フィーナ……どこまで習得してるんでしょうね。

次回は事情聴取です。(魔法授業に関しての)

取り調べです。あはは。

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