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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第七章 伴魂とこの世の理
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7.人の姿をした伴魂 7


 言っている意味がわからなかったらしく、カイルを見て、助言を受けている。


 カイルの説明を受けて、ソフィアは理解したようだった。


 理解したが、落ち込んだ様子は変わらなかった。


「陛下のお薬は、医師以外に明かされないから……」


「――陛下」


 つぶやいたソフィアの言葉に、フィーナはくらりと眩暈を覚えた。


 振る舞いたい相手は国王だったのか。


 ソフィアの立場上、おかしくはないのだが、薬効の話しをしていてよかったと、フィーナは思う。


 食生活を含め、国王がどのような生活を送っているのか、秘匿される部分もあるだろうから、把握は難しいだろう。


 下手に薬茶を振る舞って、体調に異変をきたしたら、それこそ問題だ。


「リリーナ姉様にも飲んで頂きたかったのだけれど……」


 ソフィアの言うリリーナとは、正妃様のことだろう。


 親戚筋で仲が良いと聞いていたが、呼び方から噂以上の親密さを感じた。


 ソフィアは国王、正妃に振る舞うことは諦めたが、カイルが以前飲んだ薬茶を後日、ソフィアに振る舞うことでその場は話を終えた。


 その後、いくつかの確認事項を経て、その場は一旦、解散となった。


 しばらくしてクレンドーム国の使節団が入国し、ルディとの会談を果たしたのだった。





 王女とルディの縁談の可能性を含んだ会食が終わった数日後。


 セクルトで授業を受けていたフィーナとカイルは、午後の授業が始まる前に、担任のダードリアに呼ばれて貴院校内の部屋へ連れ出された。


 午後からの授業は免除されると、部屋へ向かう道すがら、ダードリアから説明を受ける。


 どこへ行くのかと訊ねると「談話室」と返される。


 談話室で授業中に話さなければならない、急ぎの用でもあるのだろうか。


 フィーナもカイルと顔を見合わせ、首を傾げる。


 二人はダードリアの戸惑いも感じていた。


 誰かから命じられたのだろう。


 命じられたまま、フィーナとカイルを案内しているが、それがなぜなのか、なぜそうしなければならないのか、疑念を感じているのが生徒二人にも伝わってくる。


 自身の感情を隠せていないと気付いていないほど、ダードリアの戸惑いは大きかったのだろう。


 フィーナとカイルが案内された部屋は、談話室というには手広い部屋だった。


 長方形のテーブルが用意され、長辺に三人、短辺に二人、座れる大きさのものだった。


 フィーナとカイルが到着した時には、セクルトの制服姿の男性が二人いて、フィーナ達が入室した後、制服姿の男性が二人、入室した。


 彼らには見覚えがあった。


 スーリング祭に参加していた面々だ。


 ――と、言うことは、セクルト貴院校各学年、成績の首席と次席が集められたということか。


「――公の場ですので、申し訳ございませんが、お願いいたします」


 ダードリアがカイルにそっと耳打ちする。


 入学時の成績は、カイルが首席となっている。


 そのように話を合わせて欲しいとのことだろう。


 側にいたフィーナにもその声は聞こえていて、対処方を察した。


 カイルもフィーナも了承して、促された席に腰を下ろした。 


 各学年、対面で座る形式だった。


 カイル側の並びが首席、フィーナ側の席が次席の面々なのだろう。


 ダードリアを含めて、各学年、クラス担任も同室していた。彼らはテーブルから少し離れた場所に控えている。


 面々は、カイルに最上級の挨拶を送ってから席についた。


 生徒が揃ったのを確認して、担任の一人が部屋から出てすぐに戻ってくる。


 揃ったのを報告したようだ。


(――「報告? 誰に?」)


 怪訝に思いつつ、マサトに意識下で問い掛けてみる。


 返事はなく、肩をすくめる気配が、足元から伝わってきた。


 急に各学年の首席次席が集められるのも奇妙なのだが「伴魂同伴で」と指示を受けているらしいのも不可解さを増した。


 貴族籍の面々は常に行動を共にしているが、フィーナやカイルはそうではない。


 フィーナはカジカル調査団を警戒して、念のためマサトが側にいた。


 カイルの伴魂は王城の居住スペースで警護されていた。


 この談話室に向かう途中、カイルは伴魂と合流していた。


 しかも鳥籠から出て、カイルの足元に控えている。


 鳥籠に入っているのを常としているカイルの伴魂としては珍しいことだった。





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