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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第七章 伴魂とこの世の理
332/754

1.人の姿をした伴魂 1



       ◇◇      ◇◇



「あああああっ!

 もう、何がどうなってんの!?」


 カイルに案内された部屋に入るなり、フィーナはマサトに叫んだ。


 カイルはルディと第二王妃の住居区画を出ると、王城にある自分の住居区画へ皆を連れ立った。


 王城にはそれぞれの王妃に居住区が与えられている。


 王都内で王子王女は、母となる王妃に与えられた区画で生活していた。


 フィーナ以外はそうした事情を知っている。


 案内された場所もカイルの――第三王妃の居住区だと知っていた。


 アレックスとレオロードは、護衛関連で、第三王妃の居住区は隅々まで把握済みだ。


 そうした、通常では足を踏み入れない場所に来ているというのに、フィーナは自身の伴魂に感情任せに叫んでいる。


 状況から察するに、案内された場所を「客室」か「休息場」と思っているのだろう。


 そうであったとしても、それは「第三王妃の居住区内」の前提が付くのだが、フィーナは王城の区枠分けを知らないので、万人が使用できる場所と思ったようだ。


 ――王城の見取り図は極秘事項になっているので、フィーナが知らないのも道理なのだが。


 カイルが人目、傍聴を避ける場所にどういったところを選ぶのか。


 少し考えてほしい。


 ――と、アレックスとレオロードは切に思う。


 フィーナと同じ年であるサリアは、状況に思い至って、緊張に体を固くし、そわそわと周囲を伺っている。


 粗相をしないようにとの気配りが感じ取れるものだった。


 サリアは宰相の娘で、フィーナより知り得るものも多い。


 だからカイルが案内した場所がどういったところか、察しがつくのだろうとも思う。


 ――だが、それにしてもだ。


「カイルが案内した場所」という点を考慮して、カイルがくつろいでいいと言うまで、楚々とした対応を見せて欲しかったと、アレックスとレオロードはため息交じりに思う。


 フィーナはカイルに案内された部屋に入るなり、腕に抱いて連れてきた自身の伴魂を「ていっ!」と放り投げた。


 伴魂のマサトも、主のそうした行為に慣れているのだろう。


 特に驚いた様子もなく、身軽に地面に着地して眉をひそめた。


『いきなり何すんだ』


「何すんだ。――は、こっちの台詞でしょぉぉぉおおっ!

 そっちこそ、いきなり何してくれてんの!」


『そのことは後で話すって言っただろ』


「今話して! 今すぐ聞きたいのよ、こっちは!」


 ヘイ、カモン!


 ……的な雰囲気を出して、フィーナはマサトに腕を広げて下に出した腕を空に向けて、上向いた手で招く、挑発じみた行動をとる。


 サリアが「ちょっと……落ち着きましょう?」と声をかけたが、フィーナには聞こえていない。


「サラ様に何したの!? 

 あの男の人が『自分は伴魂』なんて変なことを言うようなこと、しでかしたんでしょ!?」


『俺がやらかした前提かー。

 何もしてねーよ。

 言ってることも本当だ』


「本当なわけないじゃない!

 からかったんでしょ!?

 マサトが変なこと言ったから!」


 詰め寄るフィーナに、マサトはそれ以上、何も言わなかった。


 無言で、つと、周囲に目を向けるマサトに、フィーナも次第に高ぶっていた気が静まって、少しずつ、周りの状況が見えるようになっていった。


 視線はフィーナに集まっている。


「え……と……あれ?」


 ようやく冷静になったフィーナは、肩をひそめてキョドキョドと周囲を伺う。


「落ち着いたか?」


 カイルが嘆息して訊ねた。


 フィーナは頷いて、すすめられるまま、用意された円卓に腰を降ろした。


 四人がけの円卓に、カイルとフィーナとサリア、マサトはフィーナの隣で円卓の上に座った。椅子に座ると顔が見えないためだ。


 護衛二人はカイルの後方に並んで立っている。


 部屋の外には別の護衛が立っていた。


 お茶を出した使用人が下がって、他に人がいなくなってから、カイルは口を開こうとしたが――何から話せばいいのか、戸惑いを滲ませる。


『第二王妃絡みは俺が後で話す』


 マサトの助言を受けて、カイルはフィーナに目を向けて、言葉を発した。






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