表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第六章 フィーナとドルジェと市井の生活と
327/754

55.ルディの答え 11


「この場は私室ゆえ。堅苦しい作法には構わずともよい。

 私が許す」


 サラはそう告げたが「そうは言われても」とフィーナとサリアは戸惑いを深める。


 それでも、許される範囲があるだろう。それの線引きがわからず、不用意な言動をとれなかった。


 しかしフィーナとサリアの戸惑いは杞憂に終わる。


 話の大部分はサラとカイルのやり取りだった。


 内容はルディに話した、ドルジェで見つけた報告書についてだ。補足的にフィーナも聞かれたが、数個の内容だった。


 サラは国王からドルジェの報告書の話を聞いていたようで、話のほとんどは報告書がいつ作成されたか、報告の手順を確認していた。


 国王から聞いていたが、どうしても納得できない箇所があり、それを確認したかったらしい。


 ルディがカイル達を招くと知っていたので、同席するつもりではあった。


 所用で遅くなった結果、オズワルドの入室を許してしまった。


「不快な思いをさせて、すまなかったな。

 わらわが居れば、入室を許さなかったのだが。

 ルディにも詳細を話してなかったから、対処できなかったのだろう」


「エルドの聴取は必要ないとの通達を知っていれば、退けたのですが――。

 通達を受けても、素知らぬふりを通した方がいかがなものかと思いますが。

 厚顔無恥にもほどがあります」


「通達されたのは数日前だったからな。

 後で判明しても「入れ違いとなった」などと弁明するつもりだったのであろう。

 通達にはわらわも連名しておる。

 受け取った知らせも届いておった。

 あれもそれを知っていたから、わらわには誤魔化せなかったのであろう」


 そう言って、サラは嘆息する。


「調査団は、突貫で作られたものだ。

 連なる面々を見れば、機能するとは思わなんだが……権威をカサに私利私欲に走るとは、想定すらしておらんかったわ。

 カジカル対策の調査の為と称して王都で無銭飲食、物資の徴収。

 それらが調査の為に必要だったのだと、確固たる理由を示せとしても、万人が納得する説明などできぬだろうが。

 せめて「各地の状況を調査するために、無銭乗車致しました」であれば、納得できるものを。

 徒労も費やさず、上手いところだけかすめ取ろうとの神経がいけ好かん」


 調査団の素行はルディとカイルも噂として知っていた。


 しかしサラは実情まで把握している。


 話からそう判断したルディが、おそるおそるサラに訊ねた。


「結局――調査団は何をしていたのですか?」


「調査するふりであろ。

 そこなエルドの話を聞きだせば、事足りると思っておったようだ。

 王都の書庫に籠っておったが、文献を探るふりをしていたとしか思えんわ。

 ――して、カイル殿下。

 ドルジェからの報告書は、確かに上がっておったのか?」


 サラと話し慣れないカイルは、急に聞かれて体を強張らせつつ、返答した。


「報告の経緯を辿って確認中ですが、王都に届いているところは確認できています」


「本来、陛下に報告書は届くはずだな」


「――そう、聞いています」


 各地の獣害被害対策は、通常の報告とは異なる経緯で成される。


 内容如何で各地に通達するしない、通達速度は早急か通常かを国王が判断する取り決めとなっていた。


 報告に気付かなかったならば、国王の責となってしまう。


 国王の権威を落としかねない事態を憂慮して、サラは細かな確認作業を行っていた。


「スチュードがそのようなミスをすると思っていなかったが――。

 フォールズならばな……」


 サラの呟きに、サリアは反射的にびくりと身震いした。


 視界に映ったサリアの身ぶるいに、気付いたサラが苦笑してサリアに告げる。


「ガブリエフ・スチュードはそなたの父だったな。

 案ずるな。

 スチュードの手腕には何の疑いもない。

 私利私欲なく、成すべきこと成してゆく姿は、すがすがしく、称賛に値する」


 思ってもいなかった場所で得た賛辞に、サリアも気が動転した。


「あ……ありがとう、ございます」


 そう告げるのが精いっぱいだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ