41.文献探し 36
最初は見過ごしていたフィーナだったが、はた。と感じたわずかな違和感にたどり着く。
「――――――って!!
どういうこと!?
どうしてお父さんとお母さんがマサトと話してるの!?」
「どうしてって――猫の伴魂って、人と話せるんでしょう?
猫自体珍しいし、その猫の、さらに珍しい魔物だから。
珍しいから、人の言葉、話せるのでしょう?」
訊ねるフィーナに、ロアが首をかしげながら答える。
ロアの返事を聞いて、フィーナは目を丸くした後、ぎんっ、とマサトを睨めつけた。
「――隠すんじゃ、なかったの?」
『そのつもりだったけど。
ザイルと話してるの、見られて聞かれてバレちまったから、仕方ねーだろ?』
肩をすくめてマサトは説明する。
異世界転生者だから話せるのではなく、ネコの伴魂だから話せる。
リオンとロアにはそう説明していた。
ネコの魔物自体少なく、伴魂となるとより希少となるので、リオンとロアも真偽をはかれない。
目の前の事実をそのまま受け止めていた。
『他言しないように約束してるよ。他に知れると、フィーナにも影響あるってわかってるし』
フィーナとしては微妙な心境だった。
気を遣う必要はなくなったが、これまで限られた人間だけの秘密が広まってきている。
そうしながらも、マーサとジークには気付かれないようにしていた。
マーサとジークは二人の世界に浸っている。
紋様を描かれた左手の甲を、うっとりと眺めるマーサと一緒に、ジークも紋様を眺めている。
そうしながら、ふと何かに気付いたジークが、意を決して足を進めた。
ジークに気付いたマーサも、彼の後を追う。
ジークに続いたマーサは、彼がしようとしていることを察して、止めようと声をかけようとしたが――間に合わなかった。
「あのっ!」
ジークはカイルの側に行くと、そう声をかけた。
名を知らないので、そう声を上げるしか、方法を知らなかった。
聞こえた声に、カイルがジークに顔を向ける。
ジークは最上級の挨拶を送ると、カイルの許しを得る前に口を開いた。
「フィーナは、セクルト貴院校ではどうなのでしょうか」
ジークに気付いたアレックスとレオロードが、張りつめた雰囲気を纏ってカイルの側へ駆け寄ろうとする。
ジークの発言にカイルは目を見張ったが、視界の隅に見えた護衛の行動に、腰の高さで軽く手を上げて制止させた。
二人の護衛はカイルの動作に気付いて、その意図も察して、剣を引き抜くまではせず、柄に手を添えて、様子を伺いつつ、静かに距離を詰めていった。
そうした状況にジークは気付かないまま、カイルに向かい合っている。
フィーナも張りつめた雰囲気に気付いて、その方を見て「ひぃっ!」と蒼白になった。
「ちょっ、ジーク!」
ジークには話していないが、カイルはこの国の王子だ。
ジークから話しかけるなど、ありえない。
カイルの素性を明かしていないが、貴族籍の者と思っていれば、ジークやマーサから近づかないだろうとフィーナは思っていたのだが――甘かった。
ジークとしても、カイルを「貴族籍の人」だけの認識だったら、声をかけるなど考えもしなかった。
けれど、森でのやりとりから、カイルなら答えてくれるのではと思えたのだ。
セクルト貴院校の生徒のほとんどは、貴族籍の子女だ。
ジークは商人会の仕事関係で、稀にだが貴族籍の者と接することがある。
――その時の、貴族籍の対応は、対面上、下げた顔の下で歯がみするものだった。
フィーナが不当な扱いを受けているのではないか。
それがジークとマーサ、二人が心配していることだった。
カイルの、森でのジークとマーサへの対応、フィーナとの話しぶりから、真実を話してくれるのではとの思いから、ジークはカイルに訊ねたのだった。
カイルも対面するジークから、フィーナを心配する心情は察したが、どうした部分を心配しているのかを図りかねた。




