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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第六章 フィーナとドルジェと市井の生活と
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41.文献探し 36


 最初は見過ごしていたフィーナだったが、はた。と感じたわずかな違和感にたどり着く。


「――――――って!!

 どういうこと!?

 どうしてお父さんとお母さんがマサトと話してるの!?」


「どうしてって――猫の伴魂って、人と話せるんでしょう?

 猫自体珍しいし、その猫の、さらに珍しい魔物だから。

 珍しいから、人の言葉、話せるのでしょう?」


 訊ねるフィーナに、ロアが首をかしげながら答える。


 ロアの返事を聞いて、フィーナは目を丸くした後、ぎんっ、とマサトを睨めつけた。


「――隠すんじゃ、なかったの?」


『そのつもりだったけど。

 ザイルと話してるの、見られて聞かれてバレちまったから、仕方ねーだろ?』


 肩をすくめてマサトは説明する。


 異世界転生者だから話せるのではなく、ネコの伴魂だから話せる。


 リオンとロアにはそう説明していた。


 ネコの魔物自体少なく、伴魂となるとより希少となるので、リオンとロアも真偽をはかれない。


 目の前の事実をそのまま受け止めていた。


『他言しないように約束してるよ。他に知れると、フィーナにも影響あるってわかってるし』


 フィーナとしては微妙な心境だった。


 気を遣う必要はなくなったが、これまで限られた人間だけの秘密が広まってきている。


 そうしながらも、マーサとジークには気付かれないようにしていた。


 マーサとジークは二人の世界に浸っている。


 紋様を描かれた左手の甲を、うっとりと眺めるマーサと一緒に、ジークも紋様を眺めている。


 そうしながら、ふと何かに気付いたジークが、意を決して足を進めた。 


 ジークに気付いたマーサも、彼の後を追う。


 ジークに続いたマーサは、彼がしようとしていることを察して、止めようと声をかけようとしたが――間に合わなかった。


「あのっ!」


 ジークはカイルの側に行くと、そう声をかけた。


 名を知らないので、そう声を上げるしか、方法を知らなかった。


 聞こえた声に、カイルがジークに顔を向ける。


 ジークは最上級の挨拶を送ると、カイルの許しを得る前に口を開いた。


「フィーナは、セクルト貴院校ではどうなのでしょうか」


 ジークに気付いたアレックスとレオロードが、張りつめた雰囲気を纏ってカイルの側へ駆け寄ろうとする。


 ジークの発言にカイルは目を見張ったが、視界の隅に見えた護衛の行動に、腰の高さで軽く手を上げて制止させた。


 二人の護衛はカイルの動作に気付いて、その意図も察して、剣を引き抜くまではせず、柄に手を添えて、様子を伺いつつ、静かに距離を詰めていった。


 そうした状況にジークは気付かないまま、カイルに向かい合っている。


 フィーナも張りつめた雰囲気に気付いて、その方を見て「ひぃっ!」と蒼白になった。


「ちょっ、ジーク!」


 ジークには話していないが、カイルはこの国の王子だ。


 ジークから話しかけるなど、ありえない。


 カイルの素性を明かしていないが、貴族籍の者と思っていれば、ジークやマーサから近づかないだろうとフィーナは思っていたのだが――甘かった。


 ジークとしても、カイルを「貴族籍の人」だけの認識だったら、声をかけるなど考えもしなかった。


 けれど、森でのやりとりから、カイルなら答えてくれるのではと思えたのだ。


 セクルト貴院校の生徒のほとんどは、貴族籍の子女だ。


 ジークは商人会の仕事関係で、稀にだが貴族籍の者と接することがある。


 ――その時の、貴族籍の対応は、対面上、下げた顔の下で歯がみするものだった。


 フィーナが不当な扱いを受けているのではないか。


 それがジークとマーサ、二人が心配していることだった。


 カイルの、森でのジークとマーサへの対応、フィーナとの話しぶりから、真実を話してくれるのではとの思いから、ジークはカイルに訊ねたのだった。


 カイルも対面するジークから、フィーナを心配する心情は察したが、どうした部分を心配しているのかを図りかねた。






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