40.文献探し 35
◇◇ ◇◇
「二週間くらいで自然に落ちるらしいから!」
「二週間もこのままなの!?」
焦っているのはサリアとアルフィード、ロアとターシャだ。
マーサは「自然に落ちてくれるなら」と受け入れている。
フィーナとしては皆、マーサと同じ反応をするだろうと考えていた。
一生落ちないわけではないのだ。
いいではないか、二週間くらい。
なぜ、これほど反発されるのか、フィーナは理解できない。
「どうして!? 綺麗だからいいじゃない!」
「目立つでしょ! 綺麗だけど、恥ずかしいわよ!」
「注目されないって!」
……等々。
喧々諤々の話を続けたあと、人前では「怪我をしたから包帯を巻いている」とすることで決着した。
サリアとアルフィード、フィーナは時期が時期だけに、余計な注目を集めない方がいいだろうということになった。
その考えにはカイル達、男性陣も賛同している。
フィーナだけが、結論に頬を膨らませて不機嫌を露わにした。
「隠さなくても大丈夫よね!?」
自身の伴魂に問いかけ、味方に引き込もうとしたが、マサトはげんなりとしつつ『隠した方がいいに決まってんだろ』と、隠す派の意見に寄り添った。
『ってか、目立ちたくないとか言ってるやつが、やることじゃないだろ』
「私自身が目立つのが嫌なの。
注目されるのは雪原草の紋様なら別にいいの」
『あああああ。わけわからん。
その思考回路っ!』
フィーナと伴魂がやいのやいののやり取りをしている間に、ザイルはアルフィードとサリアから、手の甲にどのように写したのか聞き取っていた。
ターシャとロアは恥ずかしそうに互いに紋様について話し、リオンは「生花でも何かしら効能があるのでは?」と興味深げに二人に状況を聞いている。
そうしたリオンとロアに、アレックスとレオロードがそっと近づいて「書庫の本の貸し出し」を願い出ていた。
そこはマサトの「地獄耳」で回避された。
『最初に言っただろ。他には漏らさないって』
フィーナとのやり取りも中途半端に、アレックスとレオロードの側へシュパッ。と足を運ぶと、そう諭す。
アレックスもレオロードも「秘密は守る」と息まいたが、マサトは首を縦に振らなかった。
『治療する時、どんな本が必要になるか、わからないだろ。
必要だと思った時、なかったら困る。
本を読みたいなら通えばいい。
借りるなんざ、ザイルからしたらいいとこどりだ。
薬草絡みもあるが、ザイルは書庫の本を読むために騎士をやめたんだ。
そうした先人がいるのに、簡単に貸し出せるとは、俺も言えねーよ。
ザイルも「そんなに読みたきゃ騎士やめれば?」……って思うだろうし』
急に話を切り上げて、カイルの護衛、二人の元に行ったマサトの後を、フィーナも追った。
マサトとアレックス、レオロードの話を聞いていたリオンとロアも「ないと困るわね」とマサトに同意する。
リオンとロア、二人の意向を受けて、アレックスもレオロードも、渋々引き下がったのだった。
「ここで読む分には構わないのですか?」
『持ち出し不可、他言無用を守れればいいよ』
話の流れから察するに、アレックスもレオロードも、本を読みたい時はドルジェに足を運ぶようだ。
「悪いわね。書庫の管理まで任せちゃって」
マサトにロアが申し訳なさそうに告げる。
それを受けたマサトは、尻尾をピンと立てて、揺らめかせた。
『気にすんなって。
俺も読みたい本、結構あるし、恩恵預かれてるし。
整理すんの、俺の為でもあるんだから』
「そう?」
――と、ロアがマサトと話している。
ロアだけでなく、リオンも普通にマサトと話していた。
 




