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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第六章 フィーナとドルジェと市井の生活と
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36.文献探し 31


 書庫の管理は自分が受け持つから自由に行動していい。


 マサトは良かれと思って言ってくれたのだろうが、フィーナには「余計なお世話」でしかなかった。


 同時に、フィーナもわかっている。


 新たに増えた本の中に、マサトが喜ぶものがあったことに。


(自分が読みたいだけじゃない)


 それを言えば、フィーナも続きが気になっていた探険物語を読みたい。


 この前帰省した時にはなかった続きが追加されていた。


 仕方ないから、セクルトに持っていって読もう。


 そんなことを考えながら森を歩いていると「おい」と背後からカイルに声をかけられ、肩をつかまれた。


「はい!?」


 驚いて振り返ると、そのフィーナに驚いたカイルが目を見開いて「前」とつぶやいた。


 言われた方を見ると、目の前に樹木がそびえている。


「ぶつかるぞ?」


「あ……。ありがと……」


 ぎこちない笑みを浮かべてカイルに礼を告げ、樹木を避けるとそそくさと行く先に進み出て、カイルと一定の距離をとる。


 近づけば早足で前に進み出て、話しかければ答えるものの、カイルを見ようとしない。


 これまでなかったフィーナの態度に、さすがのカイルも勘付いた。


 そして思う。


 そうではないのだと。


 注意したのは自分だが、行き過ぎた行為を改めてもらいたかっただけだ。


 フィーナは心を許した相手なら誰でも、同じ行動をとるだろうと思えたので、それを控えるよう、改めるよう告げたつもりだった。


 セクルトでそうした行為をなさないように。


 日常まで改めるよう言ったつもりはなかった。


 しかし。


 完全に裏目に出たと、内心、カイルは肩を落とした。


 フィーナに注意した時は、カイルも動揺していて、上手く伝えられなかった。


 突き離すように告げただけだ。


 思い返しても後悔しかない。


 フィーナはカイルが嫌がっていると――カイルに対して気をつけなければならないと思ったのだろう。


 それは、告げた後のフィーナの行動を振り返ればわかる。


 カイル以外の異性には、フィーナはこれまでと変わりなく接している。


 ぎこちない態度、挙動不審となるのはカイルに対してだけだ。


 フィーナのあからさまな態度に気落ちしつつ、けれど告げた後悔は感じていなかった。


 気を許している相手であっても、あの時のような行為はして欲しくない。


 しばらく歩いた森の中で、サンザシの木を見つけたフィーナが足を止めて、カイルに示した。


 フィーナより頭一つ分低い木だった。


 赤い実を鈴なりにつけているが、これでも時期が最後なのだという。


 大きさも、これ以上は育たないだろうとフィーナは告げた。


「これなら、移植できそうだな」


 大木でなくてよかったと安堵の息をつくカイルに、フィーナが首をかしげた。


「移植?」


「兄上の敷地に植えれば、いつでも手にできるだろう?

 そうすれば、フィーナも兄上と極力接触せずにすむだろうから」


「あ……」


 言われて、思い至った。


 ルディにハロルドへのサンザシの実を渡すと話していたのだ。


「敷地内に樹木があれば、兄上も便利だろう。

 フィーナも、今しばらくは兄上や関係者とは距離を置きたいだろう?」


 ルディの為というのも本心だが、ルディとフィーナが接する場を持たせたくなかった気持ちもあった。


 ルディとフィーナ、二人を考えると、教室からフィーナを連れ出したルディを思い出して、心穏やかではいられなかった。


 それが嫉妬だとは、カイルは気付いていない。


「報告書の在り処がはっきりすれば、レイダム領の件でフィーナが関わることもないだろう。

 サンザシの実のやりとりも無ければ、関わりを断てる」


 フィーナにとってカイルの話は「天の助け」だった。




夏バテでしょうか……。

疲れがひどくて、手が進まず、ストックも底をついて、昨日は更新できませんでした。

すみません。

毎日更新を目指してます。

明日の分のストックは確保できてます。

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