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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第六章 フィーナとドルジェと市井の生活と
302/754

30.文献探し 25


 小児校にはザイルとアルフィード、フィーナで訪問した。


 校長の許可も得て、ラーザに面談の場を設けてもらい「カジカルとキンラに関する報告書」を見たいと、ザイルが話した。


 ラーザは不思議そうな顔をしたが、控えを見せてくれた。


「これです」


 ザイルが記憶していたものだと確信を得て、報告書の鑑を模写し、書庫へと戻ったのだった。


 報告書の鑑写しをザイルは広げて、それを囲う面々に説明する。


 鑑には表題と村、村長名、報告者名が書かれ、数個の枠がもうけられている。


 横並びの端の枠には、村印と日付が記載され、ドルジェを統括する郡へ報告した日も記されていた。


 ザイルは報告書を受け取った郡の文書を確認し、日付もメモ書きしている。


 受理した報告書、さらに上層部に提出した報告書は記録に残しているはずなので、ザイルはそれを追っていけばいいだろうという。


「任せていただければ、私が動きますが?」


 それが一番スムーズに行くだろう。


 提言したザイルに頼むと、彼は承ってフィーナに声をかける。


 満面の笑みを浮かべるザイルに、嫌な予感を感じつつフィーナは「何?」と訊ねた。


「お駄賃は『オムレツ』で良いですよ」


「どこで聞いたのよ…」


 オムレツは、数ヶ月前に、マサトに『食べたい』と請われて試したものだ。


 ドルジェで調理した時は、ザイルがいない時を確認して作った。


 ザイルに知られると、いろいろ面倒だったからだ。


 今回、ザイルに尽力してもらうのだから、無下に断れない。


 とは言うものの。


(オムレツだけだと、物足りないよね)


 とも思う。


 ザイルへのお駄賃のはずだが、話を聞いている面々の期待が、フィーナにも感じられた。


 自分たちも食べれると思っているのだろう。


 時刻は夕刻を迎えている。


 今日はターシャが夕食を作り終えているだろう。


 ザイルの「お駄賃」は後日にして、今日は探索をお開きにし、ザイルの借家へと向かったのだった。






「フィーナ」


 サリアが声をかけてきたのは、食事を終えて皆が入浴を終えて、同室であるアルフィードとフィーナがくつろいでいる時だった。


 部屋は三つのベッドが用意されていて、それぞれの寝床でくつろいでいる。


 ベッドで大の字になって横になっているフィーナの側で、サリアがそっと囁いた。


「カイルと……何かあった?」


「…………。

 …………え?」


 強張った体と顔、間のあった返事から、サリアは「あったのね」と確信する。


「お茶を出してくれたあとから、様子がおかしかったから」


 告げるサリアに「何の話をしているの?」とアルフィードも興味にかられて側にきた。


「な……何でもないから」


 サリアとアルフィードに囲まれて、フィーナはしどろもどろになりながら、そう告げる。


 言えない。


 言えるわけがない。


 王子であるカイルに、はしたないことをしてしまったなど。


 しかし、緩急絡めて質問攻めにするサリアに籠絡され、勢い余って白状していた。


「うううう……」と顔を覆って自己嫌悪に陥るフィーナと異なり、サリアとアルフィードは顔を見合わせた。


「それで……カイルは何と言ったの?」


「……慎みを持てって……」


 顔を赤らめて、恥ずかしそうに告げるフィーナを、サリアもアルフィードも意外そうに見ていた。






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