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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第六章 フィーナとドルジェと市井の生活と
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29.文献探し 24


「鳥獣被害対策の報告書は、内容如何に関わらず、中央に――宰相の元へあげられます。宰相は報告書を取りまとめ、陛下に上程すると聞いています」


「ガブリエフに書類が届いていなかったのか?」


 カイルの発言に、サリアは緩く首を横に振った。


「その時期、お父様は宰相ではなかったから……」


「――フォールズか」


 渋面でカイルが吐き捨てる。


 フォールズの怠惰は、広く知られていたようだ。フォールズなら、国王への報告を怠るのもありえるだろうと、誰もが思えるほどに。


「もし……おじ様がすべきことをなさっていなかったら……どうなるの?」


 こわごわと訊ねるサリアを、カイルは一瞥して目を伏せた。


「なるようになるだけだ」


「おじ様はルディ殿下を推挙する方よ。

 もし、おじ様が処理を怠ったものが、結果、ルディ殿下に不利益を講じたのだとわかったら……」


「俺は兄上ではないから、どうなされるかなどわからん。

 ……サリア。そう聞いてくるのだから、どうなるか、想定は出来るのだろう?」


「……それは……」


 俯くサリアに、カイルは「理解できない」とつぶやく。


「フォールズを心配しているように見えるが、勘違いか?

 なぜ気にかける?

 自分がこれまでにされた行為を考えれば、胸がすくのではないのか?」


「……わからない……わからないけど……。

 ブリジットは……どうなるの……?」


「ブリジット? ――ああ、フォールズの娘か」


 ブリジットの名を聞いて、カイルは眉間の皺を深めた。


 彼女の素行も、カイルの耳に届いている。


 ますます「わからない」とカイルは眉をしかめた。


「娘にも煮え湯を飲まされただろう?

 まともな授業に成りえなかったのも、娘のせいだと聞いているが」


「それは先生が勝手に――」


「サリア」


 語気を強めて名を呼んだカイルに、サリアは口をつぐんだ。


「フォールズの件は、俺たちが考えることではない。

 今は報告書を確認するのが先だ。

 フォールズが成すべきことを成していたらそれでよし、成していなければ相応の処罰を受けるだけだ。

 ――自分の行いが自分に返るだけのこと。

 当然のことだ」


 カイルはフォールズの話題をそこで切って、ザイルとアルフィード、フィーナに小児校教師、ラーザへ報告書に関する問い合わせを繋いでもらうよう指示する。


 ザイルとアルフィードは了承し、フィーナもぎこちなく頷いていた。


 その間、目を合わせようとしないフィーナを、カイルは怪訝に思っていた。






 ラーザは教師と地方役人の二足わらじの仕事をしていた。


 もとは役人職一本だったが、小児校の教師がケガで休職した所を「一時的にも」と請われて代役を勤めて以来、本人も望んで教師職を続けている。


 役人の仕事は本職一本の時より減らしている。


 セクルトに通っていた経験から、中央が関わる案件の、独特なやり取り、書式等、そうしたものの手助けを仕事としていた。


「ラーザは必要な手続きは全てきちんとこなしていました」


 アポイントなしで直接小児校にラーザを訊ねると、授業を終えたラーザを含む教師陣が残っていた。





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