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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第六章 フィーナとドルジェと市井の生活と
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27.文献探し 21


 サリアの観察眼に驚きつつ平静さを装って「そうか?」とだけ告げる。


 カイルが戻って少しして、フィーナが書庫に戻った。


 フィーナを見た面々は眉を寄せた。


 フィーナは青ざめ、ふらふらとおぼつかない足取りで席に戻る。


 フィーナの異変に気付いたアルフィードとサリアが、側に行ってどうしたのかと確認していた。


 カイルを含める男性面々は、その状況を遠目に眺めていた。


 カイルも、先ほど見たフィーナと余りにも異なる様相に驚いていた。


 文献が小児校にあるかもと、興奮していたのが嘘のようだ。


 フィーナの様子を伺うアルフィードとサリアは、フィーナを気遣う様子が見られるだけで、驚きも興奮も見えない。


(本が小児校にある可能性を告げていないのか――?)


 先ほどのフィーナとのやりとりから気まずい面があって、接触を控えていたカイルだが、先に進まない状況にしびれを切らして、三人の元へ足を向けた。


 そばに来たカイルに、アルフィードもサリアも顔を上げる。


 同じく、顔を上げたフィーナは、カイルを見て、わずかながらもビクリと身を震わせて、萎縮している。


 そうしたフィーナの様子に、カイルに目を向けていたアルフィードとサリアは気付かず、面と向かっていたカイルだけが気付いていた。


 フィーナはカイルと目が合うと、すぐに視線をそらした。


 その態度に、カイルは眉を寄せる。


 わけがわからなかった。


 ――が、今はとにかく、文献探しを優先すべきだ。


「小児校にあるのかもしれないんだろ?」


「「小児校――?」」


 同時に呟くアルフィードとサリア。


「あ――」


 カイルに言われて思い出したようで、フィーナはおどおどしながらザイルの姿を探した。


「なぜザイル?」と思った面々だったが、フィーナとザイルの話を聞いて、何を聞きたかったか、思い至る。


 呼ばれたザイルは「小児校で見たのでは?」と聞かれても「小児校?」と眉をひそめた。


「小児校の図書室に行ったことはありませんが」


「やっぱり?」


 ザイルが呼ばれた時点で、アレックス、レオロード、マサトもフィーナの側に来ていた。


 フィーナは、ジークの話を告げた。


 話を聞いて、ザイルは「ああ」と得心する。


「そう言えば、ラーザに相談を受けたことがありました。

 国への報告書の不備がないか、確認してほしいと。

 見覚えあったのは、報告書でしたか。

 どうりで書庫で見当たらないはずです」


 あっけらかんと答えたザイルに。


 四六時中本探しに明け暮れた面々は「もっと早く思い出してほしかった!」と誰もが胸の内で思ったのだった。






 面々の声に出さない想いを感じ取ったのか、ザイルは「そのころは書庫で文献探しにいそしんでましたから。書庫の文献と並行して見ていたので、勘違いしたようです」と、言いながらフィーナをチラリと見る。


 心当たりのあるフィーナは、ザイルと目が合わないように努めていた。


 フィーナが話す素振りがないので、ザイルは「よく『この本探して』と使われてたんですよ」とため息を落とした。


 ザイル曰く、フィーナの雑多な知識は、ザイルの手助けがあってのものだという。


「そうでなければ、あれほど効率的に知識を得られるわけがないでしょう」


 ……と。


 そう話した後、報告書について話した。


 報告書を作成したラーザは、セクルト貴院校卒業生だった。


 教師は地方役所の職員で、教師以外にも役所の仕事もいくつか受け持っている。ラーザは貴院校に在籍した関係で中央政権の在り方も知っている。


 成果のあった獣害対策は、地方役所を通じて内閣府、ひいては王族に、速やかに報告する決まりを知っていたのだろう。





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