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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第六章 フィーナとドルジェと市井の生活と
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19.文献探し 13


         ◇◇        ◇◇




 バルコニーで、デッキチェアーに座るザイルと、彼に寄り添うフィーナ。


 二人の様子、やりとりを、カイルは偶然目にした。


 喉が乾いて、台所で水を飲んだ帰りだった。


 体を寄せ合う二人を見て、足が止まった。


 すがるようにザイルに抱きつくフィーナと――フィーナをいたわるザイルを見て。


 胸の奥に重く鈍い痛みを感じつつ、二人から目が離せなかった。


 話している内容はわからない。


 しばらく二人を見たあと、カイルは踵を返して部屋に戻った。


 ザイルと寄り添うフィーナ。


 二人の様子を胸に留めて。




         ◇◇     ◇◇




 二日目から、フィーナとマサトは文献探し二段回目を始めた。


 第一段階で、関係ありそうだとされた文献を確認する。


 フィーナとマサトが「読んだ」文献は少なく、結果、第三段階へ回される文献が増えていく。


 状況を見て、第一段階、第二段階、第三段階を臨機応変に割り当てする手筈だったが、次第に「どの段階も人手不足」となっていった。


 何よりの問題がだ。


「これ……本当にエルド家所有の書物なの?」


 サリアが驚く書物の量だ。


 図書館書物と違い、中身は資料的価値の少ない、大衆娯楽も多数あって、それが探索の効率性を阻んでいた。


 見慣れない形式が多く、フィーナやマサトだったら、一見して「関係ない」と思うものでも、貴族籍の面々は中を確認しないと判別できない。


 大衆娯楽にしても歴史的価値が少ないにしても。


 エルド家の書物量は、サリアの想像を超えていた。


 以前、フィーナとの話から覚悟はしていたが……甘かった。


 サリアはスチュード家の書庫を想定していた。


 エルド家の書庫が多数の書物があるとはいえ、貴族籍の書庫ほどではないだろう――。


 そう思っていた根底が、実際目の当たりにして覆された。


 整理ができてない上に、雑然としている。


 フィーナとマサトだったら「この辺りが可能性大」と思われる部分から始めるのだが、慣れない面々は、端から順だって確認していた。


 一日目の後半にそのことに気付いて、フィーナとマサトが「まずはこの辺り」と示した場所から始めるなど、時間を浪費した感がいなめない。


 ザイルに、どのような本だったのかと訊ねたが、彼の記憶も曖昧だった。


「貴族籍の書庫でよく見かける、分厚く、凝った装丁、びっしりと文字ばかり記載された本でなかったのは覚えてます」


 元々、エルド家の書庫にはそうした文献が少ない。あるのだが、奥になるという。


 ザイルもそうした本がたくさんある場所には行ったことがないので、彼の意見は参考にならなかった。


 フィーナもマサトも、本をぱっと見ただけで、読んだか読んでないか、わかるものもあればそうでないものもある。


 中を確認すると、その分、時間がとられる。


 そうして手分けして文献をあたっている時だった。


 窓の側で作業をしていたフィーナは、視界の隅で動く物が見えた。


 窓の外で何か動いた。


 ――小鳥かな?


 窓枠に止まったのかと、ふと、何気なく顔を上げて、窓の外を見た時。


 グレイの短髪、グレイの瞳。


 書庫を覗きこみ、フィーナと目が合って、驚いている幼馴染のジークを見たのだった。




         ◇◇      ◇◇




「ジーク!?」


 驚いて、反射的に立ちあがった。


 声を上げたフィーナに、視線が集中し、集まった視線はフィーナが見る先を追って、窓へと向けられる。


 集まった視線に、ジークは更に驚いて、逃げるように窓枠から離れた。


「え……!?」


 どうして逃げるの。


 思ったフィーナも、振り返って視線が集中している状況から理由を悟って「ごめんなさい!」と走りながら、姉、アルフィードに叫んでいた。


「すぐ戻るから!」



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