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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第二章 セクルト貴院校
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1.入学式

第二章、始動です。

ここから読んでも大丈夫かと思います。

正直、第一章は伏線張りまくった序章です。

(第一章→序章と変えるかも)

これから伏線回収作業+新たな伏線発生するかも? です。



「フィーナ・エルド。俺はお前を認めないからな」


 銀髪に同色の瞳。セクルトの制服に身を包んでいる男子生徒は、顔を合わせるなりフィーナにそう言い放った。


 まなじりをつり上げる彼は、フィーナより頭一つ分背が高い。


 真新しい制服から察するに、彼も新入生なのだろう。


 ザイルに伴われてセクルト貴院校に出向き、校門口で馬車から降りたフィーナに、彼はつかつかと歩みよった。


 彼に気付いた周囲が、遠巻きにひそひそとさざめいている。


 有名らしい彼は、フィーナを指さして告げた。隣に居たザイルも「おや」と声を漏らしている。ザイルは知っているようだが――。


 フィーナは眉をひそめてつぶやいた。


「――誰?」


 周囲が凍りついたのは、言うまでもない。



        ◇◇      ◇◇



 セクルト貴院校。


 国内唯一、中児校を卒業した子女が通う学び舎である。校舎は城内区域に設けられ、貴族子女の勉学の場となっている。


 基本、生徒は城内区域に設けられた寮で生活し、有事でない限り寮の側仕えとして連れてこれるのは一人、もしくは派遣なしとの体制をとっていた。


 貴族の子女が主として通う場所として認識されているが、市井の民でも成績優秀、中央政府や貴院校が認めた学生は市井の民でも入学可能だった。


 可能だが、入学したあとは他の生徒と同じく扱われる。つまり、貴族の子女と同じ対応を取られる。


「庶民だから」「知らないから」「そこまでの能力はないから」

 などの言い訳は通じない。


 前期後期、それぞれの試験で、一定の成績を修めなければ退学も辞さなかった。


 セクルトでは入学前に実施された試験の成績順に、クラス分けされる。


 入試で首位だった生徒が入学式で「新入生代表」のあいさつを務める。


 今年はカイル・ウォルチェスターが壇上であいさつを行った。


 壇上に上がった男子生徒を見て、フィーナは得心した。


 朝、顔を合わせるなりフィーナに「認めない」と告げた男子生徒だった。


「誰?」と聞いたフィーナに、その場が凍りついたのは、鈍い彼女にも感じ取れた。


 戸惑うフィーナの言葉は、対面している少年にも想定外のものだったのだろう、固まって身動きしない。


「まぁまぁ」と苦笑交じりにとりなしたザイルの声で、少年はようやく我に返ったようだった。


 指差した腕を下ろしたものの「俺のことがわからないのか」と言いたげな雰囲気をにじませている。


(わからないから聞いたんだけど)


 思ったものの、さすがに口にできる雰囲気でない。


 少年が口を開く前に、ザイルが先手をとった。


「失礼ですよ。初対面の方に対して、名乗りもせずにそのような態度をとるなど」


 少年とザイルは知り合いのようだ。言われた当人はザイルの言葉に言葉を失った。


「なぜ俺が――」


「ここはもうセクルトの校舎内ですよ? セクルトでは身分の違いは関係なく、同学年同士は対等であるはずですが」


 ザイルの言葉に、少年は言葉を詰まらせる。


「――俺のことを知らない方が悪いんだろう。こっちはそいつを知っていたのだから、名乗る必要などない」


 せめてもの反抗なのだろう。かなり苦しい言い訳だが、引きさがりたくない心情が見てとれる。


(生徒の顔と名前、全て覚えてるってこと?)


 それはすごいと素直に感心できるので、フィーナは知らない自分が悪いように思えて反射的に謝ろうとした。


 しかし、ザイルの言葉で思い違いだと気付く。


「私が側にいたからフィーナ……、エルド嬢だと判断したのでしょう? オリビア様に同伴者としてしばらくエルド嬢に付き添うと伝えていましたから。私が側に居なくとも、エルド嬢がわかりましたか?」


 ザイルの言葉は図星だったらしく、少年は押し黙った。


「ふん!」と鼻息荒く背を向けると、校舎に向けて歩いて行く。


 フィーナはその背を、目を瞬かせて見つめていた。何があったのか……よくわからない。


「なんだったの?」


 隣に居るザイルを見上げながら尋ねると、彼も首をすくめて「さあ?」とつぶやいた。


「虫の居所が悪かったようですね」


「認めないとかなんとかって……何のこと? というか、誰?」


「認める、認めないに関しては、私もわかりかねますが。彼に関してはもうすぐわかりますよ」


 ザイルの言った通り、入学式が始まって新入生代表挨拶で名前と顔が一致した。


 新入生代表挨拶をしたと言うことは、今年の主席なのだろう。


(それよりも――)


「嘘でしょ」と内心思いつつ、フィーナはきつく目を閉じて、嘆息した。


 自分がしでかしたことを、後になって思い知ることとなる。


 ――「カイル・ウォルチェスター第二王太子殿下」


 新入生代表挨拶者を紹介する司会者の声が、フィーナの脳裏に何度もこだましていた。




第二章始動です。

もともとセクルト貴院校から始まる話を考えていました。

ただ、諸々の設定を都度説明しなければならず、話が進まないので、伴魂を取得する前から書き始めるよう変更しました。

最初に考えていたのは、転生者であるネコが主人公で書いていたんですけどね。

異世界転生作品を読んで、おもしろかったところを出せるようにしたかったのですが、諦めました。

いろいろと……私的には難しかったのです。

ステータスを見れる仕組みは考えてなかったので。

レベル等は出てきません。

魔法はこれからです。

※カイルの呼び名を少々変えました。王太子に変更してます。(2019.5.8)

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