12.文献探し 6
「何となく作ってみただけ。似たようなの、教えてもらったことあったから」
燻製肉、独特の風味を主体の味として、調味料の味も含まれているが、肉独特の臭みが気になったので、薬味で臭みを打ち消していた。以前は薬味が手元になかったので、味はよかったが臭みが気になっていた。
ザイルの台所は薬味も揃っていたので、作ってみたのだと言う。
何気に告げるフィーナの言葉を、料理をしたことのない面々はあぜんとして聞いていた。
アルフィードも、ドルジェに帰省した際は料理を手伝うが、フィーナほどは出来ないと感じてい
た。
フィーナの料理を久しぶりに口にしたザイルは、ひどく満足そうだ。
「フィーナ。やはり家に嫁にきませんか?」
唐突に告げるザイルの言葉に。
リオンとロア、当のフィーナを除く面々は、食事を吹き出しそうになったり、激しくむせ込んだりと、泡食っていた。
リオンとロアは「はっはっは。そうなると、家も貴族籍に連なるのかなぁ」と、呑気に構えている。
フィーナは「はいはい」とため息交じりにあしらっていた。
「貰い手なかったときはよろしく。……まあ、そのころにはザイルにも良い人出来てるんだろうけど」
「ちょっと……フィーナ?」
アルフィードが焦って「どういうこと」と小声で訊ねた。
「ザイル様と……そう言う仲なの?」
年の差から「それはない」と思えるが、フィーナとザイルは何かと仲がいい。
自分にも人にも厳しいザイルだが、フィーナを認めて目をかけているのはアルフィードも感じていた。フィーナもザイルに信頼を寄せているのも感じている。
「え?」
言われて、フィーナはきょとんと目を瞬かせて……周囲を見渡した。
フィーナとリオンとロア以外、ザイルの言葉に顔を強張らせている。
面々の表情からフィーナも思いを感じ取って、慌てて否定した。
「冗談よ、冗談! 前からザイル、そういうこと言うから!」
「私としては至って真面目なのですが……」
「真面目の意味違うでしょ! 結局、お抱え食事番が欲しいってことでしょ?」
「まあ、そうですが。
自分で言うのも何ですが、高物件ですよ?
金銭面の不自由はさせませんし、フィーナの思うまま暮らしてもらって構いませんし。
面倒な貴族籍の付き合いも、全て不参加でかまいません。
食事さえ作って頂ければ」
「食事番として雇うのでもいいんじゃない?」
「雇用関係では互いの承諾が必要でしょう?
状況によっては簡単に解除される可能性もありますが、婚姻関係なら簡単に破談はできません。
フィーナが他の誰かと所帯を持てば、そちらが優先されるでしょうし。
ちなみに。
私から破談するつもりは毛頭ありません」
「うーわー……。
ザイルって時々、黒いところあるよねー。
本気でひくわー」
「フィーナにも悪い話ではないと思いますがね。
薬草関連は思うまま試してもらって構いませんし、望むなら専用の場も提供しますよ。
私も興味ありますから、互いに研究の場とできるでしょうし」
「え……ホントに?」
「フィーナ」
興味をひかれたフィーナを、サリアが止める。
サリアの声に、フィーナも我に返って「いやいやいや」と首を横に振った。
「やっぱりそこは違うでしょ。
結婚って、やっぱり互いに好きな人とするものでしょ?」
「そういうものですかねぇ」
言って、ザイルは貴族籍の面々にちらりと視線をむけた。
「私たちは家同士のつながりの為に婚姻を結ぶのが大半ですから。
家の為の婚姻か、互いが望む物を得るための婚姻か、互いの感情を添わせるための婚姻か。
何を主体とするか。それが異なるだけで、どれも同じだと思いますがね」
「そういう話はさー。
もう少し御年頃になってからにしてくれないかなー。
夢も希望も持てなくなるわー」
本日更新3度目です。
この回を早く掲載したかったので。
ストックも、結構あるので、決行しました。
一日3度更新は、もうないと思いますけど(汗)
補足として。
ザイルは本気ではないので(苦笑)
後々、こうした話の流れとなった理由というか、考えというか。ぼんやりと判明する予定です。
もう一つ補足です。
書き進めている中で、書く機会があるのかどうか、わからないので、この場で。
貴族籍内では、契約結婚と言うか、なんというか。
婚姻関係ではあるけれど、男女関係はないというのもありえました。
妻夫はいるものの、互いが認めれば、恋人は別に持てる。……そんな関係が普通でした。
家と家との婚姻の場合や、互いに求めるものの為に婚姻した場合は特に。
(そうした場合、後継者は、親族一同の協議で決めることになります)
ザイルは「互いの利」を求める婚姻で考えてます。
本気ではありませんが。(苦笑)




