8.文献探し 2
薬草の調合を独自に試しているのだと話すザイルに、興味を持ったのはフィーナだった。
「なになに? 何してるの?」
目を輝かせてザイルにくいついている。
そんなフィーナを、アルフィードが引きはがした。
「その話は今度帰って来た時、ゆっくりしてちょうだい。
今は他にすることがあるでしょう?」
諭されて納得しつつ、残念そうに渋りつつ。
フィーナは割り当てられた部屋に、自分の荷物を持ち込んだのだった。
警備の関係上、カイルとアレックスとレオロードは同室となった。
客間にベッドは一つだが、元々あるソファ二つが寝床となりえる。
ザイルの屋敷に女性のサリア一人だけを泊めるわけにもいかないので、フィーナとアルフィードも同室に泊まることにした。
荷物をそれぞれの部屋に持ち込んだ後、ザイルを含めた全員でフィーナの自宅へ向かう。
リオンとロア、アルフィードとフィーナの両親に顔合わせ程度の挨拶と書庫の使用許可をもらったあと、実家側にある書庫へ足を向けた。
カイルもサリアも貴族籍だか、身分はそれほど高くないことにしようと申し合わせている。
カイル自らの提案に、フィーナとサリアは驚いた。
カイルは王子との身分を、常に示していたいと思っていた。
「いいの?」
「いいも悪いも。王族の身分は必要ないだろう」
告げるカイルにフィーナとサリアは顔を見合わせ、戸惑いながらも受け入れたのだった。
書庫に行くと、アルフィードとザイルの話し合いの元、効率的に文献を探す方法を提案した。
ザイルが見た記憶がある文献は、植物、動物が全体的に書かれていたという。
役割分担を決めて、エルド家の書庫へと足を踏み入れる。
入る前から思いのほか大きな建物に、書庫を初めて見る面々は驚きを隠せない。
「大きいですね……」
建物を見上げて、レオロードが素直な感想を口にする。
レオロードにつられて書庫を見上げて、フィーナが説明した。
「元は教会だったそうです。
村で新しい教会が寄贈された時、古いものをもらいうけたと聞いています」
もらうまでにどのようなやり取り、経緯があったかは不明だが、今ではここがエルド家の知識の拠り所となっている。
家は、便宜的観点から、書庫の側に建てられた。
中に入った面々は、さらに驚いた。
視界の限り、書物が本棚に雑然と並んでいる。
「御見苦しくて申し訳ありません」
――一週間で見つかるだろうか。
――人手があったほうが助かる。
そう言っていたアルフィードの気持ちを、書庫を初めて目にした面々は今、初めて理解した。
初めの第一段階は、皆でとりかかった。
第二段階に進む書物がある程度溜まってから、マサトとフィーナが選別にかかり、第三段階目の書物が選りすぐられた後、ザイルとサリア、レオロードがそちらにかかる。
そうした手順を取るため、第一段階の書物を皆で目を通しつつ、本棚に並ぶ順、順序良く、確認が終わったものは速やかに棚に片付ける――。