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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第六章 フィーナとドルジェと市井の生活と
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7.文献探し 1


      ◇◇      ◇◇


 ドルジェに到着すると、先にザイルの借家に行き、荷物を下ろした。


「うそでしょ……」


 ザイルの住まいを見たフィーナは、想像以上の大きさに自然と呻いてしまう。


 カイルやサリア、カイルの護衛二人の寝床を簡単に了承したはずだ。


「ドルジェなんて田舎に屋敷を構える、奇特な貴族の別荘」


 ――そうドルジェで噂されていた邸宅が、ザイルの借家だった。


 二階建て、窓数から考えるに、横に六部屋は確認できる。それが二階分、奥行きを考えると、あと何部屋あるのか。


 村の中心部から離れていたので、フィーナはこの邸宅を見たことはなかった。


 貴族籍の方を見かけたとも聞かなかったので「建ててみたけれど飽きちゃったから放置」部類の別荘だと思っていた。


「元はそうですよ。おかげで破格で借りてます」


 商家気質のザイルが言うのだから、通常より余程安いのだろう。――あくまで、貴族籍の感覚で。だろうが。


「家に泊まる必要なかったんじゃない?」


 ザイルはフィーナの両親の元に勤めるようになって、度々エルド家に泊まり込んでいた。


 フィーナがザイルを貴族籍だが身分は高くないと思ってしまうのは、彼の、市井生活への順応力の高さのためでもある。


 聞いて、武芸の指導を受けて、わかっているつもりなのだが、どうしても、フィーナと同じく市井の者と感じてしまう。


 なぜだろうと考えて、答えはすぐにわかった。


 フィーナの家に泊まっても、違和感なく振るまえているからだ。


 市井の生活を送れる者を、ザイルの素性を知らない者が見て、誰が貴族籍と思うだろう?


「騎士団の訓練では、より過酷な状況を経験していますから。

 雨ざらし、野ざらしの場所で睡眠を取らなければならない状況に比べれば、雨露、風をしのげる屋根と壁があって、食事も複数の食材と調味料で調理され、温かい。

 本来、火を通して食す食材を、調理できずに体の養分とするために、仕方なく無理矢理飲み込んで、何度も吐き出しそうになったこともありましたからねぇ」


 感慨深く話すザイルに、話を聞いた誰もがひいていた。


「そんな訓練、あったか……?」


 アレックスとレオロードは、青ざめながら、ひそひそと話している。訊ねるアレックスにレオロードは首を横に振っていた。


 二人の声はザイルに届いていたらしく、ザイルはくつくつと喉奥で笑った。


「騎士団も、いろいろありますからねぇ」


 騎士団に属さない面々は言葉のままを受け止めて、騎士である護衛二人は、ザイルが呟いた意味を感じ取って、顔色を無くした。


 顔と体を強張らせ、直立不動となり、騎士の敬礼をザイルに向ける。


「ロイヤル――っ!」


「はっはっは。まさかまさか」


 二人の言葉を遮って、ザイルはわざとらしい、どこか芝居じみた声を上げた。


 硬直する二人と他の面々に「屋敷は自由に使ってください」と告げて、私室のいくつかは入室を禁じた。


「繊細な調合をしているので」





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