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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第六章 フィーナとドルジェと市井の生活と
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4.ドルジェ村へ 4


『自分には関係ないと、初めから可能性さえ考えずに行動するの、やめろよ。

 自分の価値をよく考えて行動しろよ。

 良く見れば簡単に気付く罠に、良く見もせずに自分からかかってから助けを求められたって、対処できないこともあるんだ』


「――――……」


 マサトの言葉に、フィーナは何も言えず、顔と体を強張らせた。


 険悪な雰囲気で、しん、と馬車内が静まり返る。


 アルフィードも戸惑いつつ、フィーナとマサトを伺いながら口を開いた。


「フィーナの名が広く知られた関係で、フィーナに聞き取り調査が行われることになったんだけれど――」


 元々、レイダム領のカジカル被害に関しては、調査団が結成されていた。


 調査団はカジカル被害の対処法を、学術的に調査しようというものだった。


 ルディへの聞き取りは随時行われていた。


 ルディの応対で事足りているはずだったのだが、フィーナが提案したと知れると調査団の興味は一気にフィーナへと向かった。


「カジカルの被害は国のどの領でも、毎年、一定数は報告されているの。

 その点、レイダム領の対処は目を見張るものだった。

 陛下もルディ殿下を高く評価されたわ。

 その方策を後世へ残すために調査団を作るよう命じられたの。

 陛下としては民に広く知らしめたかったようだけれど、第二王妃様が渋られてね。

 ――聞きかじった迷信を即実行したのではない。実験などから効果ありと見て対処した。

 効果あるかどうかもわからない実験に資金を投入して、懐を痛めたというのに、他は何もリスクを負わないのかと言われたそうよ。

 第二王妃様の言い分も理解できるから、折衷案として、先々十数年は、記録した文献を公表しないこと、その間はレイダム領及び、ルディ殿下が対応策を独占できる、けれど十数年後は文献を解禁して、広く知らしめる――。

 そう取りきめることで落ち着いたの。

 先々十数年は、対処法を門外不出――独占状態となるでしょうね。

 そうしたところへ、素はフィーナの案だと知られた。

 フィーナの案が――フィーナが知っていたものがきちんとしたものだったら、ルディ殿下の講じた策でなく、他の策として広めることも可能でしょう?

 フィーナへ早急に聞き取り調査がなされることになったのは、そうした事情なの。

 ――確認だけれど、ルディ殿下に話したのはきちんとした情報だったの?」


 マサトの話で体を強張らせていたフィーナは、アルフィードの話を聞いて、より一層体を強張らせた。 


 話を聞く限り、聞き取りをしたかったのは国王陛下の意向だ。


 そこまで大きな話しになっているとは、フィーナは思っていなかった。


 かぶり振るフィーナを見て、アルフィードは現実を突き付ける。


「聞き取りと言っても、調査団が望む、きちんとした答えをもっていなかったら、尋問になったでしょうね。

 調査団の面々は、貴族籍の、それなりに格式と学識のある方ばかりだから。

 市井出身者、セクルト貴院校の学生だとしか見ていなかったら、拷問もありえたわ。

 市井出身者を人としては見ていないのよ」


 拷問。


 その単語にフィーナだけでなく、カイル、サリアも体を委縮させる。


「おそらくだけれど――噂を広めたルディ殿下の側仕えの方は、調査団がフィーナに聞き取る状況も想定していたはずよ。

 尋問、拷問もありえるとわかっていたはず。

 なのに、フィーナの名を広めた。

 ――マサトの話を聞いて、思ったのだけれど、オリビアの元へ行きにくくするだけじゃなくて、そうした状況になったとき、ルディ殿下を頼るよう、仕向けようとしてたんじゃないかしら」


 レイダム領の詳細はルディに頼るしかない。


 ルディはハロルドを世話したよしみから、フィーナの懇願を無下にしないだろう。




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