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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第六章 フィーナとドルジェと市井の生活と
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2.ドルジェ村へ 2


 それまで隣に座っていたマサトを、フィーナは膝の上に抱く。


 一通りの挨拶をした後、アルフィードはカイルとサリアに侘びと礼を告げる。


「カイル殿下、サリア・スチュード様。

 申し出、ありがとうございます。

 このたび、愚妹がご迷惑をおかけしまして、大変申し訳ございません。

 ある程度、事情は御存知かと思われますが、確認の為にも再度、ご説明させていただきます。

 フィーナは何も知りません。ドルジェまでは時間がかかりますので、その間にフィーナと御二方に説明をさせて頂きます。

 ――その前に……。

 少々、姉妹の時間をとらせていただき、礼節のない行動をとることを、ご容赦ください」


 頭を下げたアルフィードは、未だ状況を飲み込めていないフィーナににっこりと微笑みかけた。


「大変だったわね」


 ねぎらいの声をかけて、両腕をフィーナへと伸ばす。


 レイダムの件をアルフィードも知ったのだろう。


「おねちゃん……」


 心配してくれる姉に、目元をうるませて、フィーナも腕を伸ばしてアルフィードに抱きつこうとした。――のだが。


 アルフィードの両腕――両手は、フィーナの両頬に添えられた。


「え……あれ?」


 嫌な予感がする。


 この構図は、何度も経験している。


 アルフィードは頬に添えた手で、フィーナの両頬をうに、とつまんだ。


「ルディ殿下の伴魂の世話係をしていたですって……?

 どうしてそんなことになったの?

 なぜこちらに話していないの。

 おかげで大変だったのよ?

 考えなしの行動するなって、何度言えばわかるの?」


「い……いひゃい、いひゃいっ!」


 頬をつまんだまま叱責する、エルド家のおしおきを、カイルもサリアも、アルフィードと同じ思いで――「しっかり叱ってほしい」と思いながら眺めていた。


『なんで毎回ひっかかるかね……』


 にっこり微笑んで腕を伸ばす――。フィーナは姉が抱きしめてくれると思っているようだが、おしおきを警戒して逃げないようにしているものだ。


 フィーナは毎回、おもしろいようにアルフィードの策にひっかかっている。


 フィーナの膝上から足元に非難したマサトは、呆れて眺めつつ、久しぶりに見たアルフィードとフィーナ姉妹の、彼女たちらしいやりとりを、懐かしそうに眺めていた。





 アルフィードがフィーナへの説教を一通り終えると、アルフィードから状況説明と今後に関して話があった。


 アルフィードが何も知らないフィーナに話し、側で聞くカイルとサリアが、わからないことを質問するといった形をとった。


「今日、カジカルの件で調査が入る予定だったの」


 急にドルジェへ帰省する事情を、アルフィードはそう説明した。


「そうなの?」


 他人事のように首をかしげるフィーナに、アルフィードは呆れかえる。


「フィーナ。あなたへの聞き取りだったのよ?」


「え!? ルディ殿下じゃなくて!?」


「キンラの提案をしたのはあなたでしょう?」


「提案――とかじゃ、ないんだけど……」


 世間話のノリで話した程度だったこと、レイダム領の件は知らなかったと告げると、アルフィードは心底呆れかえっていた。


 いろいろ言いたいことはあるが、今は時間がない。


 フィーナが本当に何も知らないのだと感じたアルフィードは、一から事情を話すことにした。


 カジカル問題の終始は知っているので、その後の話をした。


「ルディ殿下に策を提案したのがフィーナだと広まっているわ」


 フィーナに聞き取りが及んだのは、ルディが素案はフィーナのものだと認めたためでももあった。


 初めは否定していたらしいが、あまりにもフィーナの名が広まりすぎていたこと、話の整合性から認めざるをえなかったらしい。


「そのことですが」


 口をはさんだのはサリアだった。





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