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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第六章 フィーナとドルジェと市井の生活と
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1.ドルジェ村へ 1



        ◇◇      ◇◇



「――――……ナ…………フィーナ」


「っ! はへっ!」


 体をゆすり起こされて、寝ぼけた頭で跳び起きる。


 寝過ごしたかと思って焦ったが、フィーナを起こしに来たのは姉のアルフィードだった。


 姉がいるということは、ここはドルジェの実家だ。


「なんだ、お姉ちゃんか……」


 貴院校に遅刻かと思ったが、実家なら急ぐ必要もない。


「もう少し眠らせて……」


 むにゃむにゃ呟きながら、掛け布団を抱きしめて再び眠りにつこうとした。


 が、姉は許してくれなかった。


「なに言ってるの。早く起きて支度なさい」


「……支度……?」


 何の支度かと、眠りかぶった瞼を押し上げて見た視界に、サリアが見えた。


 戸惑いを含んだ表情で、フィーナとアルフィードを見ている。


 簡素な外出着姿で、外套のフードを目深にかぶって。


「どうしてサリアが家に……?」


「家なわけないでしょう。ここは寮よ」


「寮……?」


 よくよく見ると、アルフィードもサリアと同じく、簡素な外出着でフード付きの外套を纏っている。


 室内は薄暗く、夜明け前だと知れた。


 事の奇異さに気付いてハッとし、フィーナは飛び起きた。


「――どうして……」


 なぜアルフィードが寮にいるのか。


「後で話すから。とにかく、支度を済ませて。

 家に帰るわよ」


「家に?」


 なぜと問うも、アルフィードは「後で話す」の一点張りだった。


 話をしながら、フィーナの帰省用のバックに、着替え等、荷物を詰めていく。


「一週間分は用意して。帰省申請はこちらで済ませているから」


「一週間も?」


 外出着に着替えながら、通常ではありえない帰省期間に驚いた。


 実家へは貴院校が休みとなる週末に帰省するのが普通だ。


 貴院校を休んで実家に帰る場合、それなりの理由が必要となる。


 その他「なぜ」と問うても「後で話す」としかアルフィードは答えない。


 フィーナはばたばたと身支度をしながら、ふと気付いた。


「もしかして、サリアも?」


 ドルジェの実家に来るの?


 アルフィードと同じく、外出着姿を見てのフィーナの呟きに、サリアは頷いた。


「事情を知って、申し出てくれたの。

 こちらとしても、人手が多いに越したことないから助かるけれど。

 ……衣食住。貴族籍の方々のそれと違いますが、本当に構わないのですか?」


 サリアを伺いつつ確認するアルフィード。


 その表情には「大丈夫だろうか」との心配が見て取れた。


「構いません」


 サリアの決心を感じたのだろう。アルフィードはそれ以上、何も言わなかった。


 身支度を済ませると、アルフィードの案内の元、寮を出て準備していた馬車に乗り込む。


 四人乗りの馬車は見覚えがある。


 オリビアの馬車だ。


 今回の件は、オリビアも関わっているようだった。


 馬車ではアルフィードとフィーナが向かい合って座って、サリアはアルフィードの隣に座っている。


 隣に憧れの人が座している状況に、サリアは極度の緊張を感じつつも喜びに震えていた。


 フィーナとしては「え? 私の隣じゃないの?」とサリアの座った位置に首をかしげたが、後にそうした理由も明らかとなった。


 馬車は数分走った後、一度止まった。


 どうしたのかとフィーナが不思議に思っているところへ、馬車の扉が開いて、カイルが入ってきた。


「カイル!?」


 驚いたのはフィーナだけで、アルフィードもサリアも動じていない。


 カイルは目深にかぶっていたフードを取ると、フィーナの隣に座った。





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