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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第五章 それぞれの勉学事情
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80.第一王子の側仕え 23

 

     ◇◇       ◇◇


「そういえば……」


 サリアとカイルに、レイダム領とフィーナの噂を相談した夜。


 就寝しようとベッドに横になったフィーナは、ふと思い出したことを口にした。


 仰向けになって掛け布団を肩までかぶって、明かりのない部屋の中、天井を見上げてフィーナはつぶやく。


 フィーナの枕元で体を丸めていたマサトは『うん?』と、頭を持ち上げた。


「レイダム領のカジカルの件、話した女の人が言ってたんだけどね。

 殿下に話したの聞いたって――カジカルの話した時、使用人の人、いなかったと思ってたんだけど――」


「後先考えない」「不用意な発言が多い」と常々言われていたので、フィーナなりにルディと話す時は細心の注意を払っていた。


 ルディの側仕え2人は世話係になる経緯と殿下の性格を知っているから、砕けた会話でも咎めはしないだろう。


 側仕え2人以外が室内に居る時は、ルディに強要されない限り、礼儀作法に則っていた。


 ルディは面倒がったが、そこはフィーナが頑として譲らなかった。


 砕けた会話を望むなら、同室する者に「フィーナは命じられて仕方なく」なのだと示して欲しかった。


 そうした注意を払っていたが、カジカルの話の時、使用人の女性が室内に居たのを失念していたか――。


 フィーナはその時の状況を、居合わせたマサトに確認した。


 マサトは思い起こして『いや? 殿下と側仕え以外、いなかったはずだが?』と答えた。


「そうだよねぇ……。あの人、どうして知ってたんだろ……」


 うつらうつら、睡魔に思考を浸食されながらのつぶやきは、解答まで辿りつかなかった。そのまま、眠りへと落ちていった。


 この時はマサトも、フィーナの呟きを気にしていなかった。


 眠りかぶりの思考で『ふーん?』と思った程度だった。


 ……後に。


 この時、聞き流したことを歯がみすることとなる。



        ◇◇       ◇◇



 ルディがフィーナに問いただした後。


 ルディはその足で自室に向かった。


 途中、人を使わせて呼び出しをかける。


 ルディが自室に戻ってしばらくすると、呼ばれた者が扉をノックして自身の名を告げた。


 入室を許すと、机に面した椅子に座るルディの側に足を進めて、簡易な挨拶を送った後、直立の姿勢をとった。


「お呼びでしょうか」


 ルディは思考を巡らせつつ、目の前の人物を見上げる。


 ジェイク・アズマイヤ――。


 幼いころから行動を共にしている、ルディにとって単なる側仕えの域を超えた、信頼を寄せる人物だ。


 ルディはしばらくジェイクを見たあと、静かに口を開いた。


「レイダム領のカジカル被害対策。フィーナ・エルドの案だと広めたのはそなたか?」


 ジェイクはルディの言葉に小さく目を見張った。


「広めた覚えはございませんが……」


「エルドの名を出したのか」


 ジェイクは答えない。


 答えないジェイクの行為は、肯定を示しているとルディは判断した。


「どういった事態になるか、そなたならわかったはずだ」


 不快感露わに告げるルディに、ジェイクの表情の変化はなかった。


 入室した時のまま、律した姿勢を取り続けている。


「私の功績とするのが不服か?」


 フィーナの名がなければ、レイダム領で対処した功績は、ルディが立案、実行したものとされていた。


 通常、配下の者の案を採用して成果を上げるも「功績者」と名が知れるのは采配者だ。


 提案者が注目されるのは、案自体が注目されるものだった場合だ。


 レイダム領の功績は、対処した内容と、ルディの迅速な行動が評価されている。


 特に対処法については、他の領からの問い合わせも受けていた。


 それは交渉如何によっては、ルディの手札と成りえるものだった。


 レイダムでカジカル対策にキンラが効果があると知ってから、ルディはうまく対処できれば、周囲の注目を集めると想定していた。




 


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