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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第五章 それぞれの勉学事情
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78.第一王子の側仕え 21


 答えたのはフィーナでなく、マサトだった。


『ワリ。それ、俺が原因だわ』


 サリアとカイルだけではなく、フィーナも驚いた。


 マサトは『むー……』と考えながら、ピンと立てた尻尾を揺らめかせながら続けた。


『アブルードでも効果あったから、ドルジェにいる時、フィーナに話したんだよ。

 ドルジェでカジカルに作物食われて、困ってる家、あったろ。

 その対策で話したの、フィーナが覚えてたんだろうな』


 ドルジェでは被害があったのは数件だったので、効果があっても話題となるほどでもなかった。


 レイダムは領全体で取り組んだ大事業だったため、人々の口にのぼったのだ。


『もとはここに来る前の知識を応用したんだがな』


「ここ?」


 首を傾げるカイルに、マサトは説明した。


『転生前――この世界とは別のとこでの話だよ。

 ……ばーちゃん、トマトの側に虫除けでバジル植えてたから。

 効果あるって言われてたけど、実際どうかはわかんなかったけど。

 アブルードでは、カジカルがキンラの花の香りを嫌うって何かで聞いたから、ばーちゃんの畑、思い出して試したら効果あったんだ。

 それをドルジェでも試して、フィーナが覚えてて、レイダムでの結果になったってわけだ』


「それって――結局、マサトが原因なんじゃない!

 私にそんなこと教えなければ、こんなことにならなかったんじゃないの?!」


『うっわ。なんつー責任転嫁。

 じゃあ、ドルジェでカジカルの被害に困ってた人、ほおっておいたほうがよかったか?

 レイダムも、助かった人、多いだろ。

 フィーナが提案するんのは悪いと思わねーよ。

 俺が気を付けろってのは、情報元を考えて、言ったらどう影響があるかを考えて、対処法持った上で話せって言ってんだ』


「う……」


 もっともなことを言われて、フィーナは口ごもり、サリアとカイルは「うんうん」とマサトに同意して頷いた。


「そんなこと言ったって……。気付いたらしゃべっちゃってるんだもん」


『だーかーらー。それを気を付けろって言ってんだろーが』


『まだわかんねーのか』そう言って、マサトは伸ばした尻尾でパシパシとフィーナの頭を叩く。


「うううう……」


 反論できないフィーナは、口を曲げて円卓に突っ伏していた。


「大丈夫だと思うけど……フィーナの名が知れて、カジカルの生態をなぜ知っているのかと聞かれたら、どう答えるつもりなの?」


 フィーナとマサトのやり取りを見て、サリアは再度、不安にかられてフィーナに訊ねた。


 カジカルの知識は、フィーナの実家の書庫で得たものだと思っていたのだが、マサトが情報源となると、答え方に注意が必要だ。


「え……何となく覚えてましたって言うけど?」


 机に突っ伏したまま首を傾げつつ、手はしれっとマサトを指ささしている。


『てめ。』と眉を吊り上げたマサトがパシパシと尻尾でその手を叩いた。


「いたたた。冗談よ冗談。

 ドルジェで誰からか聞いたのを、覚えてたんじゃないかって言えばいいんじゃない?

 貴族籍の方々って、田舎の風習知らないでしょ?

「そんな知恵があるのか」で、納得すると思うけど」


 あっけらかんと答えるフィーナに、サリアとカイルは言葉を失った。


『それで済むのか?』と、マサトは懐疑的だ。


「いいわけないでしょう」


 頭を抑えて、サリアは続ける。


「いえ、それで済む場合もあるでしょうけど、今回の件は事が大きすぎるわ。

 取られた対策も、費用の負担が少なく、一般的な植物を用いているから、誰でも簡単に行えてしまう。

 私が領主だったら、カジカルとキンラの関係を調査するわ。

 風習としている地域があるのなら、現地に行って確認して、当事者の話を聞くわ。

 その時、フィーナの名前が出てきたらどうするの?」





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