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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第五章 それぞれの勉学事情
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77.第一王子の側仕え 20


 護衛二人もカイルと同じ話しか聞いたことがなかったという。


「しかし……あの件にフィーナが関わっていたとはな」


「領の問題だって知ってたら、キンラの話なんてしなかったわよ」


「本当に、効果があったからよかったけど……。

 ……効果なかったら、どうなってたのかしら」


「やめてよっ! 怖くて考えないようにしてたんだから!

 効果あって、無事、問題解決!

 それでいいじゃない!」


「効果なかったら、何かしらの処罰があってもおかしくないな」


「カイルまで~!」


『そうやって考えないから、同じこと繰り返してきたんだろ?

 正直「なんでコイツ、いろいろやらかすんだ?」……って謎だったが。

 今回のでわかった気がする。

 先々を考える能力が低いんだ。

 考えなしに物言うヤツ、何て言うか知ってるか?』


「……え……何て言うの……?」


『阿呆』


「うううう……。皆していじめる……」


 フィーナはいじけて背を向けて、肩を落としている。


「フィーナへの御小言はこれくらいにして――」


 言って、サリアはカイルとマサトに目を向けた。


「今回の噂――二人はどんな風に聞いてるの?」


 訊ねるサリアは先に自分が聞いている話を告げた。


 レイダム領でのカジカル被害。それをルディが迅速に対処して、少ない被害で食い止めることができた。


 これまでに類を見ない効果的な対処法、迅速な行動力に、称賛の声が上がっている――。


 カイルが知っているのもサリアと同じ程度だ。 


 マサトはまるで知らなかった。


 サリアは再度、首を傾げる。


「フィーナが聞いた時、フィーナが殿下に助言して、殿下が助言を参考に対応されて、フィーナはドルジェの聖女、アルフィード・エルドの妹だから、同じく聖女なのだと言われたのよね?」


 いじけたフィーナは顔だけ振りむいて、頷いて肯定した。


 確認したサリアは、さらに眉を寄せる。


「何か、気になるのか?」


 訊ねるカイルに、サリアは戸惑いつつ、自身の考えを告げた。


「情報に、差がありすぎる気がして……」


 サリアとカイルが聞いている話では、フィーナの話は出てこない。


 下々の者と関わりが薄いとされていた第一王子が、効果ありと思える庶民の対策案を拾って、柔軟に対応したと知れたら、ルディはさらに高評価を得られるだろう。


 なのに、フィーナに関する話は露ほども出ていない。


 しかしルディが住まう一角では、フィーナが知られている。


 彼らはレイダム領に縁ある者が多いのだろう。詳細が知れているのは、そのためではないのか。


 そうした話の流れから、レイダムの噂対処は必要ないと結論づいた。


「けど……フィーナが聖女……」


「言わないで。そうじゃないって私自身、よくわかってるから」


 サリアの物言いたげな呟きに、フィーナが間髪いれず物申す。


 フィーナとしては「お姉ちゃんが聖女って言われるのもわかんないけど」と言いたかったが、アルフィードに心酔しているサリアには口が裂けても言えなかった。


「お姉ちゃんって、治癒魔法使えるって聞いてるけど、本当? 見たことないし、お姉ちゃんから聞いたこともなかったんだけど」


「私はそう聞いているけど」


 聖女と言われるのは、そのためでもある。


 治癒魔法を使える者は少ない。


 セクルトでも概念は座学で教えられるが、文言も習得もさせなかった。


 フィーナがマサトに「治癒魔法教えてほしい」と頼んでも『治癒魔法は知らない』と言われた。


 機会がある時に姉に聞いてみようと思っていたが、必要に迫られているものでもなかったので、忘れていた。


「カジカルがキンラを嫌うと、よく知っていたな」


 カイルが感心したような、呆れたような表情でフィーナに告げる。




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