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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第五章 それぞれの勉学事情
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74.第一王子の側仕え 17


 フィーナは弟、カイル・ウォルチェスターと宰相の娘、サリア・スチュードと親しい。


 二人から情報は得られるはずだし、ハロルドの世話で王城に足を運ぶ道すがら、何かしらの話は耳にしていただろう。


 フィーナはルディに関係もなく、なにかしら影響を与える関係でもなく、フィーナが口にしたことを他の者が利用しようとしても、身分的な関係で、ルディが否定すれば「それまで」のフィーナの言に重きを置かれる可能性はないと思って、あの時は何気なく吐露したのだ。


 口さがない噂話は、フィーナの耳にも届いていると思いながら。


 ルディの言葉を聞いて、フィーナは過去を思い出そうと思考を巡らしたが、結局、小さく首を横に振った。


「そうした話があったかもしれませんが、私には関係ないと思って、聞いていませんでした」


「気にならないのか?」


「なぜですか?」


「……なぜ?」


「私は殿下の伴魂、ハロルド様の一時的な世話係にございます。

 私の仕事はハロルド様のお世話。

 仮にハロルド様の主である殿下が窮していたとしても、殿下の内情を慮るなど、それは仕事範疇外、出過ぎた真似かと存じますが……」


 フィーナは本心を話しているのだろう。


 フィーナの心情を理解しながら、ルディは困惑した。


 話は通じる。


 自分が訊ねたことにきちんと返事は来るが、ルディが想定する、斜め上の返答ばかりだ。


 ルディは第二位王位継承者である立場から、幼いころから人の感情に敏感になっていた。


 ある程度、状況を予想できて、実際そうなった。


 これまでも自身の想定内で事が運んでいたのだが、対面する、弟と同い年の少女には想定外のことばかり起きる。


 世話係を頼んで、時折、世間話を交えて話した内容から、知識の豊富さを知った。


 それだけでなく、臨機応変に対処できる聡明さも持ち合わせている。


 そうした状況を踏まえた結果、ルディからはレイダムの問題を話していないが、知っているだろうと思っていたのだが。


 しかしフィーナは「知らない」と言うし「聞いたとしても、知る必要がない」と言う。


 ここにきて、ルディはフィーナ・エルドという人間がどういった者なのか、わからなくなっていた。


 これまで接していた誰とも異なる――。


 困惑しつつ、レイダムの件を助言したと他言していないと確認をとる。


 フィーナでなければ、誰だ。


 先ほど話していた使用人の女性が広めたのかとも思ったが、彼女はカジカルの話をした場に居なかった。


 使用人内での広がりに拍車をかけたのは彼女かも知れないが、根本となる噂を吹聴したのは彼女ではない。知る順序が逆だ。


 ルディが知りたいのは、核となる噂を広めた人間だ。


 対応を考えるにしても、誰が広めたかで対処が異なる。


 自然に広まったと思えない、作為的なものを感じていた。


 誰がフィーナが助言したと知っているのか――。


 考えて、ふと思い出したのは、フィーナがカジカル対策にキンラの話をした場に同席した者の顔だった。


 まさか、と思うと同時に、胸の奥で符合する感覚を覚えた。


 なぜなのか、理由はわからないが、確かめるならフィーナより先にその人物だろう。


 不安に顔を陰らせるフィーナに「この話は後日、改めて」と告げると、ルディは部屋を後にした。


 少しでも早く確認しようと、自然と足が速まっていた。





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