表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第五章 それぞれの勉学事情
235/754

46.第一王子の伴魂 10


 しかしそれも少しのことで、他のことに思い至ったらしく、また渋面を浮かべる。


「だが挨拶はなかった」


「それは――」


 言われて思い返すと――確かに、ルディに挨拶を送った記憶がない。


 改めて思い起こして、フィーナは血の気が引く思いにかられた。


 なぜ挨拶を送らなかったのか。


 思い起こして、状況が難しかったと思い出す。


 ハロルドの相手をしていた時、急に背後から剣を突き付けられて。


 ハロルドをかどわかすのではと疑われ、誤解を解こうとしていた経緯から、挨拶の時を逸していた。


「――剣をつきつけられて、状況を説明するために挨拶もままならない状況であったかと……」


「剣をつきつける?」


「婦女子に一体なにを――」


 フィーナの答えに、ジェイクもダンケッドも驚いていた。


 フィーナが市井出身としても、セクルドの生徒に変わりない。


 学生を刃物で脅すなど、ありえない状況だった。


 側仕え二人の詰問に、ルディは尻込みしつつ、状況を説明した。


 あらましを聞いた二人は、ハロルドに懐かれるフィーナに納得した。ルディが機嫌を損ねた理由も想定できたので、立ち直れるよう、ルディに助言した。


「ルディ殿下が側におられたから、私たち二人の素性もわかったのだろう?」


 必要以上に芝居じみて告げる金髪のジェイクに驚きながら、フィーナは同意して頷いた。


「ルディ殿下がいらっしゃらなければ、御二方の名前はすぐにはわかりませんでした」


「拝顔して殿下だとすぐ気付いたのか?」


「もちろん」


 スーリング祭でも顔を合わせているのだ。カイルに似ている面ざしだということもあって、すぐに気が付いた。


 フィーナの答えを聞いて、ルディは顔を輝かせた。


「気付いていたならいい」


 と、機嫌もなおっている。


 フィーナは状況がよくわからず、内心首をかしげていたものの、とりあえずルディの機嫌がよくなってほっと安堵した。


 それからルディは、フィーナがハロルドの世話係となる話をした。


「試用期間を設けて最終判断するがな」


 その間、側仕え二人と顔を合わせる機会もあるだろうからと、顔合わせをもうけたのだという。


(先に言ってよ!)


 心の準備ができてないし! 心臓に悪すぎるし!


 ……などの思いを胸の内に抱きつつ、フィーナは引きつった笑みでルディと側仕え二人に対応していた。


 側仕えの二人も、世話係の話は全く聞いていなかったのだろう。


 驚いたものの、ルディの決定に異論は唱えられない。


 従う素振りを見せつつ、フィーナを警戒する雰囲気を纏っていた。


 側仕え二人にそつのない笑顔で対応しながら、フィーナは他にも気を付けることがあった。


(――『何でこんな、バカばっかなんだろうな?』)


 マサトのほの暗い炎を感じさせる不機嫌さが、意思の疎通で伝わってくる。


 ハロルドの状況を良くしようと思案しているのに、ルディは自身の側仕えとフィーナを対面させた。


 フィーナはオリビアの側仕え、アルフィードの妹で、今はカイルのクラスメイトだ。


 アルフィードの妹だと言ったが、カイルとの繋がりはまだ知られていないだろう。


 知られていないが、調べればすぐにわかる。


 ジェイクとダンケットがフィーナを警戒するのは目に見えている。


 フィーナの行動が監視しされ、制限され、ハロルドの状況改善が難しくなると容易に想定できた。


 苛立ちを募らせる、自身の伴魂の感情の激しさに、フィーナは内心悲鳴を上げていた。


 同時に、世話係の仕事が想定以上に難しくなったと漠然と感じていた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ