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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第五章 それぞれの勉学事情
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40.第一王子の伴魂 4


 フィーナは驚いた。


「なぜですか?」


「来ればわかる」


 言って、フィーナの手を引いて歩いて行く。


 野次馬的に人が集まっていた中、そうした状況となって、悲鳴じみた歓声があがった。


 立場上、フィーナとしては振り払うこともできず、抵抗することもできない。


 思わず、助けを求めるようにカイルを見た。


 カイルはフィーナとルディのやりとりを呆然と見ていた。


 状況を理解できないといった表情をしていたカイルだったが、すがるように見るフィーナにハッとして、声をかけようとした。


 フィーナも、カイルの呆然とする表情を見て我に返った。


 カイルは何も知らない。


 フィーナは思いとどまって、口元を引き締めると首を横に振った。


(大丈夫だから)


 思いは通じたのか、それとも状況がわからなかっただけなのか。


 カイルは踏みとどまって、フィーナとルディを見送った。


 マサトも主であるフィーナの足元を歩いている。


(――『バカだこいつバカだこいつバカだこいつ!!!』)


 ルディへの苦りきった叫びを耳元で感じて、顔をしかめそうになるのを我慢した。


 罵倒しながらついてくるのは、ハロルドを思ってのことだろう。


 フィーナは不安を抱えつつ、手を引くルディに従った。


 校舎を出ると、使用人らしき女性が二人、出入り口側で控えていた。


 ルディは手を離すと二人にフィーナを託した。


 軽く頭を下げた二人に、フィーナも頭を下げる。


 その一人が、細長い紐状の布を両手に持ってフィーナに差し出した。


「これは?」


「目隠しだ。見られると少々まずいものがあるからな」


 ハロルドの居住スペースを知られないようにしたいのだろう。


「サンザシの実はお渡しします。世話係の話も、ここでよろしいではございませんか。

 人目もありませんし」


 もうすぐ午後の授業が始まる。


 生徒はそれぞれのクラスにいるので、校舎の外に人の姿は見当たらなかった。


 しかしルディは頷かなかった。


「世話役の件は、状況を見なければ判断が難しいだろう?」


「それは――」


「時間が惜しい」


 ルディに急かされ、フィーナは仕方なく目隠しをした。


 使用人の手をとり、連れられるまま足を進める。


 手を引かれても、何も見えない中を歩くのは怖い。


 ハロルドは王城だろう。そこまでの距離を考えて、フィーナは頭を抱えた。


 見えない足元に緊張しながら歩くこと数分。


「着いたぞ」


「え? もう、ですか?」


 告げたルディにフィーナは驚いた。


 目隠しをとるよう言われてはずすと、確かに、城らしき建物内だった。


 高い天井、装飾品はきらびやかだ。


 検問を通った気配もなかったのだが――。


(――『なるほど。転移か』)


(――転移?)


(――『決まった場所と場所を繋いでいるみたいだな』)


 目隠しをされていないマサトは、状況を全て見ていた。


 マサトが見たものが、フィーナにもぼんやりと伝わったが、転移の概念のないフィーナには、何のことかさっぱりわからなかった。


(――『ハロルドの部屋の場所もだが、転移を知られたくなかったんだろ』)


 マサトは、魔法を保持した道具を設えて、永続的に作動するようになっているのではという。


(――『初めて見るから、はっきりわかんねーけどな。さすが王族ってとこか。おそらく秘匿してる魔具だろ』)


 言っている意味も重要性もさっぱりわからなかったが「希少価値の高い装置を使った」のはわかる。





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