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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第五章 それぞれの勉学事情
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36.珍しい伴魂 13


 ルディとしてはセクルト貴院校の内情は興味なかったので、カイル本人を注視していた程度だ。他の生徒や校内の事情を知らなかった。


 フィーナは入試の話をしなければならないのかと困惑した。


 事情はある程度理解しているが、言うべきでないことをうまくはぐらかして話す術を知らない。


 困惑しながら、そういえばと思い至る。


 ルディはフィーナを貴族籍だと思っていた。


 スーリング祭で見たから――成績優秀者が出席する場だから、市井出身者と思わなかったのだ。


 特に一学年生で市井出身者がスーリング祭に出るなどあり得ないのだから。


 ルディとしても、フィーナの名を聞いて、貴族籍の頒布図が思い浮かばなかったことに納得していた。


 アルフィード・エルドの妹だと聞いたが、アルフィードはオリビアの側にいて長いので、市井出身者だとの認識が薄れていた。


「――確かに、市井出身なら確認が必要か」


 フィーナは入試の件をどう説明すればいいのかと焦っていたが、ルディの関心が他に移って安堵する。


「そ――そうですよ! ふさわしいかどうか、確認されたほうがいいと思います!」


(ダメと言われると思いますけど! そうであって欲しいですけど! そうでないと困りますけど!!)


 フィーナは胸の内で「却下」されることを望んでいた。


 そうした話の中、ルディがふと気付いたことを口にした。


「そういえば。スーリング祭に出席したのなら、寮長ではないのか?」


「――あ。」


 その件もあった。


 サリアから教わりつつ、徐々に引き継いでいる途中だ。


 寮長もこなせていないのに、世話係をする時間などあるのだろうか?


「仮に世話係を受けたとして。お世話の時間はどうなるのですか?」


「学生だからな。週に数日、数時間が精いっぱいか。その辺も含めて確認、検討しよう」


 話の流れ的に「不可能」っぽい雰囲気を感じて、フィーナはホッと胸をなでおろした。


 王族の伴魂のお世話など、扱いが怖くてかなわない。


 ハロルドが膝の上に顎を乗せてくつろいでいる今も、足を動かしたくても気を使って思う位置に移動できないのだから。


 そう考えるフィーナに、マサトが意識下で話しかけてきた。


(――『世話係、頼まれたら引き受けろ』)


(――……え!? ど、どうして!?)


(――『後で説明する』)


(――イヤよ! そんなの無理だし、時間もないし!)


(――『できる範囲でいい。少しでもいい。話があれば受けてくれ。じゃないと……まずいぞ、あれ』)


(――まずい……って……何が?)


 意識下の話は、ルディが話しかけたことで途切れた。


 世話係の件は、明日、サンザシの実を取りに行った時に、話をするという。


 そこでルディ達が城に戻ろうとしたとき、フィーナは意識下の会話で、マサトから伝えるよう頼まれたことをルディとハロルドに話した。


「城に戻られる時は、子供の姿の方がよろしいかと……」


「なぜだ?」


(――『目立つからに決まってんじゃねーか』)


 『バカか、こいつ』との悪態を、意識下で聞いて乾いた笑いを漏らす。


「ここは居住室から離れていますし、殿下の伴魂を初めて目にする者もいるでしょうから、いらぬ騒ぎを避けるべきかと。

 子供の姿で布にくるんで殿下か――あ。お許し頂けるなら私が運びましょうか?」


 フィーナの申し出は、ハロルドが子供の姿で運ばれる点は採用されて、フィーナが運ぶ点は却下された。


 ハロルドを洗って汚れた姿は、ルディに付き従うには、成獣姿のハロルドより興味をひくだろう。


 城に帰る際のハロルドの話をしたあと、マサトがフィーナにこう話して欲しいと意識下で告げる。


 それを聞いたフィーナは戸惑った。


 意味がわからなかった。


(――『伝えてくれ。頼むから』)


 頼まれて、不承不承、口を開く。


「――殿下。伴魂様ですが、日ごろは子供のお姿か成獣のお姿か、どちらでいらっしゃいますか」


 なぜそのようなことを聞くのかと、ルディは眉をひそめたが、答えてくれた。


「通常は成獣だ。気まぐれで子供にもなるが」


 答えたルディの言葉を受けて、マサトが意識下で話してくる。


 ――言うとおりに話すように、ゆっくりとした口調、フィーナの話をまねた言葉で。


「『そうですか。ではしばらく、子供の姿で過ごさせてください』」


「子供の姿で? なぜだ?」


「『成獣だと、魔力の消費が大きいようです。

 それは殿下の体に負担となります。

 体調がすぐれないときは負担になりますから、その時のための練習と思ってください』」


(――そうなの?)


(――『あとで話すって言ったろ』)


 ルディは考えたあと「考えておこう」と告げた。


 そうしてルディとハロルドは城に戻り、フィーナとマサトは寮室に戻ったのだった。





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