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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第五章 それぞれの勉学事情
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29.珍しい伴魂 6


 困惑するフィーナの思いはマサトにも届いていた。


(――『そりゃ、そうなるだろ』)


 嘆息しながら、フィーナの左隣に歩み出て腰を下ろした。


 マサトに気付いた第一王子が軽く目を見張っている。フィーナが壁となって見えなかったようだ。


(――どういうこと?)


 問うフィーナにマサトが答えるより先に、第一王子、ルディが口を開いた。


「カイルの同伴者――だったか……?」


 問いかけなのか、独り言なのか。


 答えるべきか否か迷っていると、フィーナの考えを察したルディが「発言を許す」と告げた。


「……はい」


 肯定するフィーナをルディは探るように見つめる。


「何をしていた?」


「……何、とは……」


「なぜ、これと居た」


 言ってルディは子ライオンに目を向ける。


 フィーナは戸惑いつつ、セクルトの敷地内で子ライオンを見つけてからの経緯を話した。


 フィーナの話を聞いた後、ルディは子ライオンを見た。


 しばらくそうした後、小さく息をつくと、フィーナに向けていた剣を鞘におさめた。


「嘘はついていないようだな」


 剣がしまわれたのにホッとしながら、フィーナは訝った。


 フィーナが話した内容をすぐに信じてくれたのが不可解だった。


 スーリング祭で顔を合わせているとはいえ、ルディにとってフィーナは素性の知れない人間だ。


 その輩が話した内容を簡単に信用したのが解せなかった。


 その想いはマサトにも伝わっていた。


(――『当人が認めれば疑いようもないだろ。だいたいそいつは……』)


 フィーナの意識下に、マサトのため息交じりの声が聞こえてくる。


 そのマサトの声も、途中で止まった。


 ルディが子ライオンをつと見下ろして声をかける。


「ハロルド。いつまでその姿でいるつもりだ?」


 ルディの声に反応して、子ライオンが一声あげた。


 そして。


 ふわりと大気が膨らんだのを感じた次の瞬間には、子ライオンはルディの腰の高さほどある成獣に変化へんげしていた。


 たてがみは雄々しく、筋肉質でありながらしなやかな体躯は、大型の獣としての威圧感をたたえている。


 変化は一瞬のことだった。


 目の前で起きた光景に、フィーナは驚いて思考が停止した。


 思考が停止しながらも、本能的に理解する。


 子ライオンは――あれは。

 第一王子の伴魂ーー。


(――『成獣の姿でなかったにしろ、ライオンだったら第一王子と関係してるかもって普通考えんだろ?』)


(――だって獅子って……)


 呆然としながら、フィーナは意識下でつぶやく。


 意識下でつぶやきながら脳裏に浮かんだ画像は、マサトにも伝わったようだ。


 フィーナが思い浮かべた画を感じたマサトは、意識下で呆れた吐息をもらす。


(――『それ虎だろ。お前、獅子と虎を勘違いしてたのか?』)


 その通りだった。


 獅子がライオンの別名だと理解している。


 理解しているが、フィーナには「ライオン」の名称が馴染み深く、「獅子」と言われてもピンと来なかった。


 ライオンはドルジェの実家にある本で覚えた。


 様々な動物が書かれたその本には、ライオンとトラが同じページに載っていた。


 「ライオン」の文字とその姿が描かれ、その隣に「トラ」の文字と姿が描かれていた。


 なぜ思い違いをしたのかわからないが「獅子」と聞くと、同じ発音数で体格も似ている「虎」を思い浮かべてしまっていた――。


 そうした理由は後日振り返って思い至った結論だ。


 この時のフィーナは、なぜ自分が勘違いしていたのかわからず混乱していた。


 「雄々しい」と聞いていた第一王子の伴魂。


 子ライオンの愛らしい姿が「雄々しい」に結びつかず、第一王子の伴魂だと思い至らなかった。


 知らなかったとはいえ、第一王子の伴魂を連れまわした事実に変わりない。


 自分の行いに、フィーナは青ざめた。


「名は、何と言ったか?」


「――フィーナ・エルドと……申します」


 ルディに問われて、頭を下げて答える。





フィーナの勘違いは、私の勘違いです。(苦笑)

理由は異なりますが「獅子=ライオン」とわかりながら脳内でルディの伴魂は虎のイメージになっていました…。

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